同志社 沖縄研修旅行事故の再発防止策を公表 平和学習の「中立性」も第三者委員会で検証へ

学校法人同志社(八田英二理事長)は10月30日、同志社国際高等学校(宿久洋校長)の沖縄研修旅行中に発生したボート転覆事故について記者会見を開き、事故後の対応状況と再発防止策を公表した。第三者による特別調査委員会が認定した安全配慮義務違反や安全管理体制の問題点を説明するとともに、平和学習の「中立性」と「適切性」について検証する新たな第三者委員会の設置を明らかにした。

事故は3月16日、沖縄県の辺野古で実施された研修旅行中に発生。生徒1人と船長1人が死亡し、17人の生徒が負傷した。学校法人同志社は3月28日に第三者による特別調査委員会を設置し、7月31日に調査報告書を受領した。

報告書では、学校法人同志社に①事前調査義務違反、②安全性を確保した研修旅行計画を策定・実施する義務違反、③説明義務違反の三つがあったと認定された。

事前調査については、辺野古のボートコース導入時に操縦者や船舶免許、定員、救命胴衣の有無などを確認したのみで、導入後は一度も現地の下見を行っていなかったと指摘。旅行会社に依頼しない学校独自のプログラムでありながら、引率教員の乗船、気象情報の確認、出航の最終判断、救命胴衣の着用説明など、安全管理に関する基本的なルールも定められていなかった。

また、生徒や保護者への事前説明では、乗船するボートが抗議船であることなどの詳細が伝えられておらず、調査委員会は、保護者がコースの選択について意見を述べる機会を逸していたと指摘した。

事故原因として報告書は、安全管理体制の不備、リスク管理体制の機能不全、安全管理に関する検証を妨げた組織風土、安全管理意識の欠如の4点を挙げた。過去の研修に参加した生徒の感想文にはボートコースの危険性を読み取れる記載があり、引率教員から海上保安庁の船舶がボートに並走していたことも共有されていたという。さらに、研修旅行の開会礼拝で船長が抗議活動に伴う危険性に言及していたにもかかわらず、教員からプログラムの見直しを提案する声はなかったとした。

学校法人同志社は、特別調査委員会の分析と法人側の認識に齟齬はないと説明。ガバナンスと内部統制の欠如を根本原因とし、安全管理の仕組み・体制、教職員個人の意識、組織風土の問題が相互に影響し、長年にわたり改善されなかったとの認識を示した。

事故後の保護者への連絡についても不備を認めた。配付資料によると、事故発生は午前10時10分だったが、保護者全体への事故の連絡は午後2時1分、転覆したボートに乗船していた生徒の保護者への電話連絡は午後3時30分ごろ以降となった。法人側は、事故発生時の連絡体制がマニュアルに明記されていなかったことや、引率教員の配置、役割分担、校長による指示などが不十分だったことを原因としている。

再発防止策として、9月1日付で法人内に「安全管理室」を新設。各設置校の校外活動に関する安全管理を統括し、高リスク活動の事前審査・承認や安全管理状況の確認、是正指示などを行う。同志社国際高校では危機管理マニュアルを改訂し、研修旅行の計画を複数の会議体で検証する仕組みを整えた。今後、各校共通の安全管理マニュアルや統一的な安全基準の策定、教職員への研修、人事交流の拡大などを進める。

一方、沖縄研修旅行を含む平和学習の「中立性」と「適切性」については、10月22日付で新たに「教育の中立性及び適切性に関する検討委員会」を設置した。

配付資料によると、事故で転覆したボートが辺野古への基地移設工事に抗議する船だったことなどから、平和学習の内容の偏りが指摘されていた。文部科学省は5月22日付の見解で、辺野古への普天間基地移設工事に関する学習について、政治的活動を禁じる教育基本法第14条第2項に反するものであったと考えられ、是正を図る必要があるとした。

これに対しては、教育・研究団体などから異論も出されている。全日本教職員組合(全教)は5月27日、安全管理の問題を理由に教育内容にまで踏み込むことを「一方的な政治介入」と批判。教育科学研究会も5月30日、教育行政機関の裁量権を逸脱した不当な行為だとして抗議した。日本教育法学会や日本歴史学協会なども、教育の自主性・自律性を損なうとして、文科省の判断に疑義を唱える声明を発表している。

学校法人同志社は、生徒・保護者・教職員へのアンケートや外部の教育専門家による意見・提言を踏まえて検証を進めてきたが、遺族から法人と利害関係のない第三者による検証や、2015年以降の平和学習の検証などを求める要望書が提出されたことも踏まえ、さらなる検討が必要と判断した。

新たな検討委員会は、昭和女子大学ダイバーシティ推進機構キャリアカレッジ学院長の熊平美香氏を委員長とし、立教大学名誉教授の萩原なつ子氏、弁護士の横瀬大輝氏で構成。中央教育審議会前会長の荒瀬克己氏がアドバイザーを務める。委員とアドバイザーはいずれも法人と利害関係を持たないとしている。

検証対象は、2014年度から2025年度までの沖縄研修旅行を含む平和学習の内容とその「中立性・適切性」に加え、各設置校の特別礼拝などにおける政治的・社会的事項の有無と教育内容の評価にも及ぶ。委員会は問題点の指摘、原因の分析、改善策の提言を行う。法人側は、検討結果がまとまり次第、公表し、改めて記者会見を開くとしている。

事故を受け、8月には八田英二理事長が辞任の意向を表明し、当時の同志社国際中学校・高等学校校長であった西田喜久夫氏は同月末に解任された。法人側は、その他の関係者の責任の所在や処分についても、特別調査委員会の報告書と今回設置した検討委員会の検証結果を踏まえて検討するとしている。なお、4月から自粛していた校外学習は10月26日から一部再開した。

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