書店の将来~書店を閉店する者として(1) 亀岡 徹 【書店員日記】

*2024年4月1日付掲載

3月に入り、政府は全国で減少する書店の振興に専門的に取り組む経済産業省直属の省内横断組織「書店振興プロジェクトチーム」を設置しました。「カフェの併設やイベントなど、集客に向けた各書店の取り組みをまとめ、事例を共有して経営に生かす」。また、「書店経営者を招いた車座を開催する」となっています。全国の書店の数も20年前と比較すると半分に減り、道内の書店も大手のコーチャンフォーや蔦屋書店は都市を中心に新しく展開するものの、老舗と言われる書店が今月も帯広と恵庭で閉店します。

テレビ番組でも話題になった「一万円選書」の砂川市「いわた書店」岩田徹店主の記事が、ちょうど新聞に載っていました。希望者それぞれの事情を聞き解いて10冊選ぶという作業は、どこの書店もできる方法とはいきません。イベントやカフェの併設も、それぞれの書店に新たなスペースや人材、経費、それに携わる時間の確保などの問題があり、小さい個人書店は、どれだけ今回のプロジェクトを好意的に見ているでしょうか?

1冊売って20%の利益しかない書店業は、現金商売だとやっていけますが、今やカードなど電子決済が主流。来店されるお客様以外は売掛金扱いで、伝票の発行と月末に締めて請求書の発行と送付という業務があります。その他諸々の事務経費がかかり、20%の利益はほとんどなくなってしまいます。また集会に書店として出店しても、すでに著者割で購入している方々ばかりで、せっかく用意した書籍がまったく売れないということもありました。学校教科書や図書館納品など、売り上げが大きければそこそこの利益が出ますが、年間でわずかな月に限られます。

キリスト教書籍の装幀は丁寧でお金がかかっています。売れないと発行部数自体少なくなり、値段もさらに上がります。今この混沌とする世の中で、本当の意味で大切な1冊としてもっとたくさんの方に届けたい。ぜひ読んでもらいたいと思わないのでしょうか? であればもっと簡素な装幀で、もっと安価であってほしい。そしてクリスチャン人口が1%を切ったこの状態にあって、ノンクリスチャンへの導きを促す書籍が必要とされています。

どこの教会も若者がいない、来ないと言われ、教職の成り手さえどの教派も減っている現状です。10年後、20年後の教会は統合と廃止の中でしぼんでいくでしょう。そしてまた復活し、ムーブメントを起こしてほしい! その時のためにも、決して大きくない器であるキリスト教出版販売協会の中で、その時を見据えて、ぜひ教会と信徒を結んでいる書店を大切に歩んでほしいものです。

(かめおか・とおる=北海道キリスト教書店)

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