株式会社クリスチャントゥデイ(矢田喬大社長)が「クリスチャン新聞」編集顧問の根田祥一氏に名誉毀損で110万円の損害賠償を求めた裁判の控訴審判決を受け、カトリック中央協議会(菊地功会長)と日本基督教団(雲然俊美総会議長)は2024年12月20日、7項目にわたる公開質問状を送付した。これに対し同社は1月8日、回答を公表。この間に問われてきた数々の疑惑について改めて否定した。
カトリック中央協議会と日本基督教団は、ともに「カルト問題キリスト教連絡会」のメンバーであり、同連絡会は一審判決後の6月に続き、二審判決後の11月にも報告会を開催してきた(本紙2024年7月1日付、12月25日付で既報)。11月の報告会参加者らが採択した「高裁判決報告会 声明」は、クリスチャントゥデイが「ダビデ『共同体』の一部であり、張在亨・ダビデ張牧師を再臨のキリストと信奉する団体の活動の一翼を担ってきたこと」を確認している。
11月13日の東京高裁による控訴審判決では、一審を上回る66万円の賠償が命じられた一方、クリスチャントゥデイが否定していたダビデ張こと張在亨氏やその組織との関係、張牧師を「再臨のキリスト」と信じた元スタッフの証言などが事実認定された。今回の「公開質問状」は、これまでに認定された「正統派キリスト教の教義から外れる内容を講義してきたこと」「無償労働及び借財の強要」「韓国人宣教師の不法入国への加担」などについて、「キリスト教メディア」を標榜する同社の見解を改めて問うもの。
日本基督教団はこれまで総会議長声明を2回、日本福音同盟(JEA)は理事会見解を3回、淀橋教会/峯野龍弘牧師が所属するウェスレアン・ホーリネス教団は特別調査委員会の調査報告に基づく教団委員会見解を発表しており、それぞれ「キリスト教として同一の線に立つことはできない」「取材は受けられない」「距離を置く」などの立場を明らかにしてきた。
公開質問状の内容は、事実認定に触れる判決文を引用した以下の7項目。
「1 貴社はこれまで、ダビデ張こと張在亨牧師との関係を否定する言動を繰り返してきました。高裁判決が認定した、張牧師及びその組織との関係について……説明してください」
「2 貴社はこれまで、東京ソフィア教会等において異端的な教義が教え込まれたことはないと主張してきました。高裁判決が、張牧師が再臨のキリストであると示唆されたとする証人らの供述は信用できるとして認定した……事実について説明してください」
「3 (中略)高裁判決においても、次の事実認定は維持されていることについて説明してください。……①平成14年頃から平成15年頃にかけて、東京ソフィア教会等の宣教師等の中には、BやAなど、のちに控訴人の活動に従事することになる者に対し、張牧師が再臨のキリストであると示唆する講義を行う者がいたこと、②B及びAは、平成16年ないし平成17年頃に東京ソフィア教会に通いつつ、異端信仰であることを疑われないように、淀橋教会の礼拝に通っていたこと、……控訴人の現在の代表者である矢田は、かつて東京ソフィア教会に属していたが、平成17年から淀橋教会に転籍し、同教会に通うようになったことが認められる」
「4 上記3の高裁判決において〈控訴人の現在の代表者である矢田は、かつて東京ソフィア教会に属していたが、平成17年から淀橋教会に転籍し、同教会に通うようになったことが認められる〉と認定されていますが……①矢田氏は、現在まで淀橋教会の会員でありつつ、東京あいのひかり教会または東京ソフィア長老教会など日本オリベット・アッセンブリー教団関係の集会等の活動にも参加していますか? ②そうであれば、矢田氏は日本オリベット・アッセンブリー教団の信仰を今も堅持していると考えてよいですか?」
「5 貴社はこの訴訟において、従業員を無償で労働させたことはないと主張しました。高裁判決が、CTを含む関連組織は『使役』の名目の下に労働の対価を正当に支払わなかったなどと認定した……事実について説明してください」
「6 貴社はこの訴訟において、上記5のような状況は事業が軌道に乗る前の設立当初の時期における事象であった旨を述べました。では、本邦キリスト教メディア随一とうたう月間ページビュー数にまで発展した現在、従業員に正当な労働の対価を支払っていることを、公租公課等の証拠をもって証明してください」
「7 貴社は、韓国人宣教師の不正入国に便宜を図ったとの『ダビデ牧師と共同体を考える会』ブログの証言について、この訴訟において、『出入国管理法上、韓国人が会合を目的として入国する場合に控訴人が「嘘の保証書」を作る必要はなく、また、控訴人には国内外を含め支店や支社は存在しない』と主張しました。しかし高裁判決は、『原告は、平成19年6月、張牧師の宣教活動を行う宣教師に対し、開催場所を偽った会議の開催等を示す文書を交付し、本邦への入国及びその宣教活動の便宜を図った』事実を認定しました。このような出入国管理法に抵触する『キリスト教メディア』にあるまじき行為について、貴社の見解を求めます」
これに対し、期限とされた1月8日、カトリック中央協議会と日本基督教団宛てに送られた株式会社クリスチャントゥデイの回答は4ページ。
その中で同社は、答弁書や陳述書の文面を引用しつつ、「弊社は張牧師とは法的に関係がなく、また弊社の運営に影響力を持っていることもない」「韓国基督教総連合会(CCK)加盟教団である大韓イエス教長老会合福教団の元総会長、世界福音同盟(WEA)の北米理事などを歴任した人物(張氏)……と関係があることは何ら問題のないこと」「証言は約20年前の事柄に関するもので、弊社としては、2人の証言は信用性に欠けるものと考えています」「東京ソフィア教会等で張牧師を再臨のキリストだと教えていた事実はありません」「矢田については、淀橋教会に転籍していますが、……『忙しい中で奉仕活動にも積極的に参加し、他の信徒に対しても温かく親身に接してくれており、そのような信頼の下で淀橋教会の信徒役員にも推薦されています』(峯野龍弘氏による陳述)」「事業がある程度軌道に乗り従業員を雇用してからは、給料を支払わなかったことは一切なく、従業員を無償で労働させた事実はありません」との主張を繰り返した。
さらに末尾では、「根田氏の違法性を全く踏まえないで判決を恣意的に解釈する行為は、判決の趣旨を逸脱するものであり、判決を悪用する行為」「判決の傍論をもって、弊社に対し、異端信仰を有しているなどといった同種の悪質な表現活動を行う場合は、法的措置を講じます」と警告している。
*「回答」の全文は「異端・カルト110番」のサイト(https://cult110.info/news/ct-250109/)で閲覧可能。