他宗教に惹かれてしまう 山中正雄 【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】

Q:最近、仏教やイスラム教の教えにも強く惹かれます。この気持ちを、自分でもどうすればいいか分かりません。(30代・男性)

キリスト教一筋に生きるべきなのか。この世界には、仏教やイスラム教のような大きな宗教が他にあるのに……。そうした疑問が背景にあるのでしょうか。あるいは人間が共に生きるには、宗教も含めて深い相互理解が必要と思われたからかもしれません。いずれにしろ、救いとは何か、他の宗教の観点からも考えてみたい、と願っておられるのでしょう。

学問的には、「比較宗教学」という分野があります。宗教を人間の文化的な営みとしてとらえ、その発生・開祖、神・仏と開祖の関係、教典、教えの趣旨、聖職者の立場などについて、細かく論じています。筆者自身も興味をもつ分野で、その内容から教えられることも少なくりません。神学校の教科でもあり、牧師にとって必須の学問であると考えられます。

ただご質問で一つ気になることもありました。それはキリストによる救いの確信です。仏教の「悟り」でも、イスラムの「戒律」でもない、ただキリストに対する「信仰」による救いがある、という一点が明瞭であれば、学びは比較的やさしいでしょう。

しかし、確信がなければ、他の宗教に自ら身を投じなければならないかもしれません。学びと実践を一つにして、はじめて真偽の判定をはかる事ができるからです。

聖書全体を学び、キリストによる救いを喜び、礼拝者として生きる。そうした土台の上に、他の宗教について学ぶことをお勧めします。選ぶのではなく、選ばれている幸い(ヨハネによる福音書15章16節)を知ることがキリスト教信仰の神髄です。足元を固めながら、他の立場も謙虚に学びましょう。

*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。

やまなか・まさお 精神科医、日本アライアンス教団千葉キリスト教会牧師。 1951 年高知県生まれ。高知高専、広島大学医学部、日本アライアンス神学校卒。日本アライアンス教団関東教区長。マザーズ・カウンセリング・セン ター(MCC)運営委員長。著書に『こころの診療室』(日本キリスト教団出版局)、『うつ病とそのケア』(キリスト新聞社)など。

【既刊】『教会では聞けない「21世紀」信仰問答Ⅱ -悩める牧師編』 上林順一郎監修

関連記事

この記事もおすすめ