21世紀キリスト宣教会で初の大規模展覧会 服部州恵さん「聖なる空間Ⅰ」

東京・広尾にある21世紀キリスト宣教会(昨年、「21世紀キリスト教会」から改称)で服部州恵(はっとり・くにえ)さんの展覧会が開催されている。こちらの教会建物は10年ほど前に安藤忠雄氏のデザインにより建築。現在、教会員は約300人で、服部さんもその一人。本展覧会のオープニングには、俳優の大浦龍宇一さんらが出演する朗読劇と賛美のイベントが行われた。

会期中、随時、来場者に向けて服部さん本人が作品解説ツアーを行い、一つひとつの絵に込められた意味を語っている。

服部 こちらの「Madonna and Child 2024」は、イエス様をユダヤ人、マリアを日本人のように描いて、日本に来たイエス様として描いています。画材としてはテンペラと油彩、それから金箔を使っているのですが、金箔はルネッサンス期によく使われました。また日本画でも金箔を用いるのですが、この絵では琳派に近い技法を使っています。花はすべて日本の花で、牡丹や桜、菊など。赤ちゃんのイエス様が持っているザクロは受難とたくさんの実を表しています。この絵が掛けられているのは地階で、階段から下りた所なのですが、あえてここに展示することで「へりくだり」という意味を込めています。イエス様は神様のひとり子でありながら世に降り、へりくだった姿で現れられたからです。

「Madonna and Child 2024」

服部さんは美術大学に通っている学生時代にキリスト教に導かれた。フラアンジェリコの絵に驚きと感銘を受け、このような作品を描きたいと願うようになったが、日本では本格的にテンペラ画を習うのが難しかった。卒業後、一旦就職してお金を貯めるなどの準備をし、30歳で満を持してイタリアに留学。テンペラ画の基礎を習得した。その後、日本でテンペラ画の権威である川口起美雄氏の存在を知り、5年間師事した。現在、服部さんはほとんどの作品をテンペラと油彩で描いているが、それは細かい表現をするのに適しているからだという。金箔を使い始めたのはコロナ禍以降のこと。

服部 金色は天国の色。契約の箱や神殿で使われたように、聖書では聖なる空間を創るために金が用いられてきました。清いもの、天国の色彩を表そうと、金箔を使った表現を研究しています。クリスチャンになる前は暗い絵ばかり描いていたんですけどね。祈ると輝くイメージが湧いてくるんです。

服部さんには共に活動するクリスチャンのアーティスト仲間がいる。2年前、小泉恵一さん、May SoさんとBezalel(ベツァルエル)というグループを結成し、グループ展を開催。今回も2人は展示会場のレイアウト、照明などを手伝っている。また、「アートバイブルⅠ、Ⅱ」の監修者である町田俊之氏がクリスチャン・アーティストを継続的にバックアップしている。フライヤーの紹介文は町田氏によるものだ。

服部 この教会で大規模な展覧会が行われるのは初めてのことで、私は普段、画廊で展示をしているんですが、いつも、「この1週間、ここが教会になりますように」と祈っていたんです。今回は、教会が美術館のようになればと願っています。教会に来たことがない人に、美術館のように訪れてもらう機会になればと。そうした意味で、安藤建築の現代的プロテスタント教会に絵があるのはとてもいいことだと思うんです。

この展示の前に朗読劇の人たちと話した時に、聖なる空間を創ることを託された人たちだと感じたんですね。芸術作品を通して神様を崇めて、伝道していくというビジョンです。そのためにも作品の質を良くして、神様の栄光をたたえる礼拝として芸術が用いられたらと考えています。

来場者たちの中には、キリスト教主義の学校に通ったがクリスチャンにはならず、今回久しぶりに教会に来たという人が何人もいた。絵が好きなノンクリスチャンの友人に誘われて、自分も絵が見たくて来たという人も。春から建築学科に入る学生は、建築の細部に感嘆の声を上げつつ、絵の解説にも熱心に耳を傾けていた。

「ひとつの世界に、文字から入る人もいるかと思いますが、それが少し難しい人もいるかもしれません。アートを通して神様と出会う機会を作っていきたいです」と語る服部さん。展覧会「聖なる空間Ⅰ」は12月25日のクリスマス当日まで。正午~午後5時。入場無料。

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