「キリスト教メディア」を標榜する株式会社クリスチャントゥデイ(CT)が、本紙編集顧問・クリスチャン新聞顧問の根田祥一氏を名誉毀損で提訴した民事訴訟の控訴審で、第1回口頭弁論が9月4日、東京高等裁判所で開かれた。根田氏が、20年間クリスチャントゥデイ問題に取り組んできた経験と思いを意見陳述した(下記に全文)。即日結審し、判決は10月30日午後1時10分、東京高裁424号法廷で言い渡される。
一審では、ブログ「ダビデ牧師と共同体を考える会」に掲載された脱会者らの証言のうち、五つの記事の14の表現が原告の社会的評価を低下させるかが争われ、東京地裁民事部(小松秀大裁判官)は今年4月、そのうち7か所について真実性を認め、110万円の損害賠償請求のうち50万円の支払いを被告に命じる判決を言い渡した。
原判決では、かつてCTで使役させられ共同体を脱会した2人の元メンバーの証言などの証拠を採用し、CTの構成員がダビデ張こと張在亨(ジャン・ジェヒョン)氏を「再臨のキリスト」と信じていることを峯野牧師に秘し、淀橋教会に出席あるいは所属したことなど、疑惑の核心部分を真実といえると認定した。これに対しCT側が控訴し、淀橋教会主管牧師である峯野龍弘氏及びCT代表取締役の矢田喬大氏、CT前代表取締役の高柳泉氏の陳述書を提出し、原判決の認定を誤りであると主張した。
陳述書で峯野氏は、淀橋教会の主管牧師を約50年続け、元日本福音同盟(JEA)理事長などの役職も務めたことを述べ、「長年牧師をして多くの人を見てきた私からすれば、ある人物が異端かどうか、信用できるか否かを自分で判断することはできる。矢田氏や高柳氏と関わりを持つようになった後(約20年もの間)、彼らの発言内容や日々の教徒・信徒との交流状況はかなり注意を払って見てきたが、彼らからキリスト教の教義に反するような異端的な言動や行動が見られたことは一度もない」などと主張した。
統一協会員が牧師になりすまし30年
これに対し根田氏側は、長年の牧師でもカルトの偽装に騙される例はあること、福音派・主流派を問わずキリスト教界の責任ある立場の人々の間に、峯野氏と淀橋教会がCTを擁護し加担していることを憂慮する声は少なくないことを、証拠をもって主張した。
日本基督教団カルト問題連絡会世話人の齋藤篤氏(仙台宮城野教会牧師)は陳述書で、日本基督教団立の神学校を卒業し、正教師試験に合格して同教団の教会で牧師を務めていた人物が、統一協会信者であることを30年にわたり隠し続け、神学校教師や教師検定委員のようなベテラン牧師でもカルトの偽装を見抜けなかった例があることを証言した。
峯野氏/淀橋教会の擁護加担を憂慮 JEA幹部ら賛同署名
同じく同連絡会世話人の豊田通信氏(小田原教会牧師)は陳述書で、ある大学教授から「学生がキャンパスに入って来た韓国系の女性に連れて行かれたらしい」と相談があり、調査したところ、学生は日本キリスト教長老教会(張在亨氏の韓国人宣教師が日本で開設した教会)に通い、CTの記者もしていることがわかった経験を証言。その宣教師や学生の「普通の教会ではあり得ない、組織防衛に徹する言葉や態度から、カルト性を疑わせるに十分だった」として、教会に電話したにもかかわらずCTの高柳社長から電話がかかってきて、その教会とCTが一体であるとわかったこと、運転資金について尋ねると「サラ金で300万の借金をして運営している。アルバイトをして返済している」などと常識外れの説明を受けたことから、「彼らの背後に大規模な組織があり、旧統一協会と同様にマインドコントロールを行う団体である」と思ったことなどを述べた。
そして、「淀橋教会の峯野龍弘牧師がクリスチャントゥデイ関係者の正体を見抜くことができず、淀橋教会に会員として受け入れているのみならず、一時は自ら代表取締役会長の立場にあったことは、クリスチャントゥデイ社が正統なキリスト教メディアであるかのような誤解を与え、キリスト教界全体に多大な悪影響を及ぼしてきました」として、声明「私たちは、淀橋教会および峯野龍弘牧師がクリスチャントゥデイを擁護し加担することを憂慮します」への賛同署名を呼びかけたことを説明している。
同声明には、JEAの現職・前職・元職の理事長、総主事、神学委員長、国際渉外局長(前世界福音同盟国際評議員、元アジア福音同盟議長)、各教団の異端・カルト問題、ハラスメント問題、人権問題など専門部署の責任者ら32人が署名している。
またJEAの岩上敬人総主事は陳述書で、水口功JEA理事長、石田敏則JEA前理事長と8月2日に淀橋教会を訪ね、峯野牧師と面談した際、峯野氏が「コロナ感染が広がる前に、張在亨氏に日本に来て記者会見を開くよう、矢田さんを通じて伝えたが、コロナ禍で実現しなかった」という趣旨の発言をしたと証言。クリスチャントゥデイは、張牧師とは関係ないと主張し続けているのに、連絡窓口はクリスチャントゥデイ関係者なのだとわかり、驚いたことを述べた。
JEA(水口功理事長、岩上敬人総主事)は8月20日、クリスチャントゥデイに関して3度目となる報告書を加盟会員に出した。報告書では、JEA理事会が4月22日に出された東京地裁判決の以下の事実認定を確認し、2004年、2018年の対応を変更することなく、JEAは引き続き、『クリスチャントゥデイ』の取材を受けないことを改めて表明した。
1.「原告の構成員は、その活動の便宜のため、峯野牧師に対し張牧師が『再臨のキリスト』であるとの信仰を秘し、淀橋教会又はその所属教団の宗教上の理念に従順である態度を示して、峯野牧師にその旨信じさせていたということができ、侵害部分4(1)の内容は、その摘示する事実の重要な部分において、真実に合致すると認められる。」(判決文26頁より)
2.クリスチャントゥデイについて「張牧師の信仰に関わりのある者が設立に関与し、現代表者の矢田も、過去にその信仰に関わっていたことが疑われること、原告やその関連組織の活動に、張牧師の信奉者が『使役(しえき)』として無償で従事したこと、原告の従業員が、張牧師の示唆を受けて、取材の便宜のために信仰を隠し、淀橋教会に所属したこと、張牧師の宣教師に入国の便宜を図ったこと、張牧師が、原告の記事の内容について指示を出していたことが認められる。」(判決文19頁より)
意見陳述書全文はこちらから(PDF)↓
https://cult110.info/wp-content/uploads/2024/09/eaeed5c2fe2f366b51955d751c717854.pdf