「論破」を目指すのは「揺らぎまくる自分」【聖書からよもやま話490】

主の御名をあがめます。

皆様いかがおすごしでしょうか。MAROです。
本日もクリプレにお越しいただきありがとうございます。

聖書のランダムに選ばれた章から思い浮かんだよもやま話をしようという【聖書からよもやま話】、今日は 旧約聖書、詩篇の127篇です。よろしくどうぞ。

詩篇 127篇5節

幸いなことよ 矢筒をその矢で満たしている人は。
彼らは門で敵と論じるとき 恥を見ることがない。
(『聖書 新改訳2017』新日本聖書刊行会)

僕たちは日々、様々な議論をします。そして議論には論拠が必要です。論拠なしにただ滔々と自分の勝手気ままな意見を述べても「それって、あなたの感想ですよね?」と言われて「論破」されてしまったりします。そして恥ずかしい思いをします。一方で確かな論拠を持っている人の意見は強いものです。もちろん、議論に勝つという意味でも強いのですが、たとえその議論で相手と意見の一致をみなかったとしても、自分は揺らぐことがないという意味でも強いんです。むしろどちらかと言えば、確かな論拠を持っている人ほど相手を「論破」しようとせず、相手の意見をしっかりと聴ける傾向があるように思います。論拠のない人ほど、なんとかして相手を「論破」しようとして相手の意見を聴かないものです。

これは、確かな論拠を持っている人は、相手が何を言っても自分の正当性がその論拠によって揺らがない一方で、論拠のない人は相手を「論破」することによってしか、自分の中でさえも自分の正当性を主張できないからです。

ですからたとえ議論する相手がいない場合であっても自分の中で自分の考えについて確かな論拠をもっておくことは大事です。それが「揺らがない自分」をつくるんです。論拠を持たずに「論破」に正当性を見出す人は、実は「揺らぎまくる自分」を生きている人です。だってもし相手に「論破」されたらその人の正当性は破壊されてしまうんですから。これは自分の意見のあり方を、議論相手の影響下に置いているということです。

そして聖書ではこの確かな論拠を、神の知恵、つまり聖書に置けと教えています。そうすれば揺らぐことがないと。そしてその知恵を矢筒の矢にたとえています。剣は一本持っていれば十分ですが、矢は一本だけ持っていてもあまり役には立ちません。たくさん持っていなければいけません。様々なことに対応できるように、たくさんの矢、つまり論拠を備えておけと聖書は教えているんです。

それを備えておけば「恥をみることがない」と記されています。「勝てる」とか「負けない」とは記されていません。議論において大切なのは勝ち負けではなく、自分が揺るがないことです。揺るがなければ恥をかくこともありません。もちろん、ときには相手の意見が正しくて、自分が間違っていると悟ることもあるでしょう。そんなときに自分の間違いを素直に認められるのも「ゆるがない自分」があるからです。「ゆらぎまくる自分」の人は間違いを認めることができません。

揺るがない家は揺るがない土地に立てなければいけません。ゆるゆるの泥の上にいくら立派な家を建ててもその家はすぐに壊れます。そして知恵において絶対に揺るがない岩盤のような土地とは神の知恵、聖書なんです。それは聖書の他の箇所にも何度も書かれていることです。自分の知恵の基礎をどこに置くかは、自分の家の基礎をどこに置くかと同じくらい、いやそれ以上に大切なことです。

それではまた。

主にありて。
MAROでした。

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横坂剛比古(MARO)

横坂剛比古(MARO)

MARO  1979年東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、バークリー音楽大学CWP卒。 キリスト教会をはじめ、お寺や神社のサポートも行う宗教法人専門の行政書士。2020年7月よりクリスチャンプレスのディレクターに。  10万人以上のフォロワーがいるツイッターアカウント「上馬キリスト教会(@kamiumach)」の運営を行う「まじめ担当」。 著書に『聖書を読んだら哲学がわかった 〜キリスト教で解きあかす西洋哲学超入門〜』(日本実業出版)、『人生に悩んだから聖書に相談してみた』(KADOKAWA)、『キリスト教って、何なんだ?』(ダイヤモンド社)、『世界一ゆるい聖書入門』、『世界一ゆるい聖書教室』(「ふざけ担当」LEONとの共著、講談社)などがある。新著<a href="https://amzn.to/376F9aC">『ふっと心がラクになる 眠れぬ夜の聖書のことば』(大和書房)</a>2022年3月15日発売。

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