現地時間27日、第76回カンヌ国際映画祭でエキュメニカル賞の授賞式が行われ、コンペティション部門に出品されている役所広司さん主演の日本映画「パーフェクト・デイズ(原題) / Perfect Days」がエキュメニカル審査員賞を受賞した。映画情報サイト「シネマトゥデイ」をはじめ日本経済新聞など複数のメディアが伝えた。
エキュメニカル審査員賞は、カンヌ国際映画祭の独立部門の1つで、キリスト教関連の国際映画組織「SIGNIS and INTERFILM」の6人の教派を超えたキリスト教徒審査員によって、コンペティション部門出品作の中から選ばれる賞。「人間の内面を豊かに描いた作品」に与えられる。昨年は、是枝裕和監督の韓国映画「ベイビー・ブローカー」が受賞している。
「パーフェクト・デイズ」は、渋谷の公共トイレ清掃員・平山(役所)を主人公に、ドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダース監督が東京で撮り上げた作品。一瞬一瞬に小さな喜びと美しさを見いだしながら生きる無口な平山の日々を丹念に描いている。仕事に真摯に取り組むことから生まれる尊厳、周囲の人々や自然への尊敬と思いやりを詩的に美しく映し出した同作は、現代社会に欠けた普遍的な価値を示した傑作だと高く賞賛された。
現地25日夕方に行われた公式上映会後の記者会見でヴィム・ヴェンダース監督は、世界中で大ヒットした「ベルリン天使の詩」(1987年)を引き合いにしながら、「主人公の平山は天使に近い。人々は天使に気づかないように、平山に気づかないことがある。私にとってはスピリチュアルな作品」と語っている。
主演の役所広司さんは、同作で主演男優賞を受賞した。日本人俳優が最優秀男優賞を受賞するのは2004年是枝裕和監督の作品、「誰も知らない」で主演した俳優の柳楽優弥さんが日本人として初めて受賞して以来19年ぶり。同作について役所広司さんは、「きめごとのないドキュメンタリー的な撮り方で、自由にのびのび演じられた」と話す。
また、脚本家の坂元裕二さんが是枝監督の最新作「怪物」で脚本賞を受賞したことが発表された。