バチカンの外務局長ポール・リチャード・ギャラガー大司教は5月18日から20日まで、ウクライナを訪問した。この訪問は、戦争に苦しむウクライナの人々に教皇フランシスコの寄り添いを伝えることを目的としたもの、と「バチカン・ニュース」が報じた。
ギャラガー大司教は、最終日の20日午前、多数の市民が犠牲になった、首都キーウ近郊の町ブチャ、ヴォルツェル、イルピンなどを訪れ、深刻な破壊の跡を目にした。特にブチャでは正教会の聖堂を訪問、集団墓地で祈りをささげた。また、ヴォルツェルでは神学校が受けた被害状況を視察した。この後、ウクライナのドミトロ・クレバ外相と会談、その後、共同記者会見を行った。大司教は、「訪問を通し、この国の傷に手で触れることになった」と語った。
同大司教は、特に同日朝訪問したブチャについて、ヨーロッパにおいて「最も恐ろしいことが起きた場所として、残念ながら21世紀の歴史に残るだろう」と述べた。そして、「これは『平和はあって当然のものと思ってはいけない』という、私たちへの警鐘である。平和は神の賜物であると同時に、宗教や政治的帰属を超えた善意の人々の絶え間ない努力を必要とするものである。その努力がなければ、この危険はわたしたちのものとなる。ブチャはそれを雄弁に語っている」と話した。
大司教は、「多数の死者、あらゆる種類の暴力、都市の破壊、家族の離散、非常に多くの難民」に対する教皇フランシスコの大きな悲しみを伝え、「教皇庁は真の和平プロセスに協力する用意がある」と述べつつ、そのためには当事者双方からの要請が必要と語った。
一方、カトリック教会は即時のあるいは長期にわたる人々の精神的・物質的必要に応えるよう努力しているとし、ウクライナ当局に謝意を表すとともに、カトリック教会をはじめキリスト教諸教会の平和と連帯のための取り組みに感謝を述べた。(CJC)