あなたがたが知らずに拝んでいるもの、それをわたしはお知らせしましょう。
使徒言行録17章23節(参考箇所同書17章16〜34節)
地中海世界にはローマ・ギリシアの神々が至るところに祭られていました。パウロがやって来たアテネの町は溢れんばかりの神々が祭られていて、中には「知られざる神に」という祭壇もあったと彼自身言っています。彼はこの神の祭壇に刻まれた「知られざる神に」という名を逆手にとって、ギリシア人が知らない真の神を知らせようと言っているのです。
彼は異教世界の中でキリストの救いを説くのに、真っ向から対立的に説き伏せるようなことはしませんでした。彼は人々が見慣れている神々の像や祭壇を見ながら、創造主である神は人の手による神殿に住むことなく、人に仕えられる必要もないこと、さらには人の方がむしろ「神の中で生き、動き、存在している」(28節)と教えたのです。
異なる神々が力を持つ世界の中でキリストを伝えるヒントをここから得ることができるのではないでしょうか。日本の社会での伝道を考えるとき、見た目には無宗教的であっても、いざキリスト教信仰を前面に出して伝道をしようとすれば、いたるところで他宗教の問題に打つかざるを得ません。パウロのようなアプローチの仕方は、この社会で伝道するわたしたちに大きな示唆を与えるものです。