罪状書きには「ユダヤ人の王」と書いてあった。
マルコ15章26節(参考聖書箇所同書15章24-26節)
主の十字架を画いた絵画などを見るとき、イエスの頭上にINRIという文字が書かれている罪状書きに気付きます。これは「ナザレのイエス、ユダヤ人の王」の頭文字をラテン語で書き表したものです(Iesus Nazarenus Rex Iudaeorum)。ヨハネ福音書によれば、ヘブライ語、ラテン語、ギリシア語で書いてあったとあります(ヨハネ十九章二十節)。 ここにも聖書の真実が隠されています。イエスを処刑する側からいえば、十字架刑にふさわしい罪名を見るでしょう。同時に救い主御自身は、神の国の王であってユダヤ人の王であることにまちがいはないのです。 その意味では、この罪状書きはイエスを犯罪者として烙印を押そうとする、時の政治権力や宗教指導者の意図が逆に、イエスは救い主であることを明らかにする宣言となっているのです。イエス抹殺の試みが、かえってイエスの真の姿を明らかにすることになるという人間にとっては皮肉としか思えない出来事に、実は深い真実が塗り込められていることに驚きを禁じ得ません。人の思いをはるかに越える神の計画の実証をここに見ます。