日本政府が「2050年までに脱炭素化社会を実現する」と言明し、ようやく日本も温室効果ガス排出ゼロに向けて動き始めました。従来の化石燃料に頼るエネルギーからの脱却が求められる今、YWCAが大切にしてきたことを改めて共有します。
地域・世代・ジェンダー間の不正義の問題
世界YWCAは、1980年代より気候変動・地球温暖化の問題に警鐘を鳴らしてきました。気候危機は、地域間・世代間・ジェンダー間の不正義の問題です。気候変動が進むと、経済的に貧しい国や地域の女性の負担が増え、生命、安全、性と生殖の健康・権利を脅かすことになるのです。一部の人の過剰に豊かな生活が、他の人や未来の世代を苦しめるという不正義をただすことは、世界YWCAのビジョンに合致します。
昨年、菅義偉首相(当時)は、脱炭素社会実現に向けて「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と表明しました。ようやく国際社会と足並みを揃えるスタート地点に立てたことは喜ばしいですが、それをどうやって実現するかが大問題です。
「核」を否定し、「少」エネルギー生活の実践を
菅首相の表明を受けて日本YWCAは、『脱炭素化に賛同し、原子力発電以外の方法での達成を求める声明』 を発表しました。YWCAに連なる者にとっては「言わずもがな」ですが、原子力発電に頼る脱炭素化には反対であることを内外に表明し、再確認の機会となりました。
日本YWCAの先達は、1970年の全国総会で、‘平和利用’も含めた 「核」 を否定することを決議しました。仮に原子力発電所の安全管理が万全で事故を起こさないとしても、ウラン採掘から廃棄物処理や廃炉にいたるまで、最前線で働く人々が放射線被曝にさらされ、放射性廃棄物の負担は何万年も続き、廃棄物処理の道筋も見えない……等を知り、「核」と人類は共存できない、と判断したのです。
このカギカッコで括った「核」 は、地球を何度も破滅に導き得る、人間には制御不可能な巨大エネルギーであり、現代文明の象徴としての 「核」です。「核」 を否定して生きるとは、「核の傘」(=核兵器による威嚇)を含む武力に頼らない、真の平和を創り出す生き方であり、核エネルギーに頼らない「‘少’エネルギー生活」の実践も内包する決議でした。
以来、YWCAは少数派として「原発反対」の声を上げ続けてきましたが、2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故で安全神話は崩れ去り、今は市民社会の多数がこの思いを共有していることを実感します。
根源的な問いから目を背けないで
ただ、どうやって実現するのか、という最初の命題に戻るとき、新技術の開発にばかり期待するのでなく、具体的私たちの暮らしを変えてゆくことにも知恵を絞る必要があります。
何をもって 「豊か」 とするか、世界の人々や次世代から「奪う」ことをやめ、いかに資源を「分かち合う」のか――そういう根源的問いから目を背けているわけにはいきません。
ジェンダー正義の立場からも、世界の仲間と共にこの問題に取り組みたいと願います。
日本YWCA運営委員 雀部(ささべ)真理
原子力発電に頼ることには断固反対します
2020年11月、日本YWCAは「脱炭素化に賛同し、原子力発電以外の方法での達成を求める声明」を発表しました。こちらから全文をご覧いただけます。
出典:公益財団法人日本YWCA機関紙『YWCA』10月号より転載
YWCAは、キリスト教を基盤に、世界中の女性が言語や文化の壁を越えて力を合わせ、女性の社会参画を進め、人権や健康や環境が守られる平和な世界を実現する国際NGOです。