2020年、世界各地で祝われたクリスマスは、コロナの雲に覆われ、例年とは様変わり。さまざまなメディアが報じた一部を紹介する。
キリスト生誕の地とされるパレスチナ自治区のベツレヘム。例年、クリスマスツリーやミサを目当てに世界中から人々が訪れるが、今年は世界遺産の聖誕教会前で光り輝くツリーの前も人影はまばらだ。地元の人たちが写真を撮り合う姿がちらほら。
パレスチナ自治区やイスラエルでは感染拡大を防ぐための都市封鎖が断続的に続き、外国人観光客が訪れることが難しい状況が続いている。聖誕教会に隣り合う聖カテリナ教会で24日夜に開かれたミサも、今年は聖職者しか参加できなかった。
国民の9割余りがキリスト教徒のフィリピンでは、25日各地でミサが行われた。新型コロナウイルスの影響で参列者の人数が制限される中、感染拡大を防止するため、政府は、ミサに参列する人を定員の3割にするなどの規制をしている。
首都マニラのサント・ドミンゴ教会では、警備員が入場する人の体温を測ったり、教会の中で互いに1メートル以上の距離を取るよう呼びかけていた。異例のミサとなったが、フェイスシールドやマスクをつけた信者たちは熱心に祈りをささげていた。
韓国では、ソウルの明洞(ミョンドン)聖堂で24日深夜、初めてオンラインでのミサが行なわれ、廉洙政(ヨム・スジョン)枢機卿が、「いま私たちは、とても厳しい時間を送っている。疎外された人たちや貧しい人たちのことに、より多くの関心を持つべきだ」と呼びかけた。信者たちは、インターネットや放送を通じて、それぞれの場所で、対面しない異例の形のミサに出席し、平穏な日常が1日も早く戻るよう祈りを捧げた。
ソウルなど首都圏では、5人以上のすべての私的な集まりが禁止され、クリスマスイブの24日も、繁華街は閑散としていた。
トルコでは、レジェプ・ターイプ・エルドアン大統領が、「この地は1000年にわたり平和と平穏のうちに暮らした人々の故郷であり、宗教、言語、民族、宗派の区別なく、尊敬と愛情に基づく古の文明を受け入れてきた」として、「この古の無二の文明の構成員として、我々は、この地域における様々な文化を、類まれな豊かさ、文明のモザイクの稀有な一部として受け入れている。歴史を通して我々が築いてきた諸国家において、共存し、この地を栄えさせてきたように、今日も明日も、お互いの違いを豊かさとみなし、お互いに敬意を抱いて未来をより一層繁栄させるために努めていく」と述べた。
そして「キリスト教の様々な宗派、伝統、教会に属する我が国民が信仰し祝福するクリスマスが、トルコにおける連帯を発展させるきっかけとなることを願っている。この気持ちと考えとともに、キリスト教徒の我が国民をはじめ、全キリスト教世界のクリスマスを改めて祝福し、その平穏と幸福を祈る」と述べた。
イギリスのエリザベス女王は25日午後、事前に録画されたスピーチで、大切な人の死を悲しみながらクリスマスを迎えている人や、感染予防のため家族や友人と集まれずひとりで過ごしている人を思いやり、「あなたはひとりではありません」と語りかけた。女王と夫フィリップ殿下は今年3月以来、パンデミック対策のためロンドン郊外のウィンザー城で生活している。
24日からイタリア全土で都市封鎖が始まった。カトリック教会は、国内の信者に対し、近所の教会でクリスマスのミサに参加するよう呼びかけた。ローマにある教会のパウエル・プルスツィンスキ司祭は「クリスマスを家族で祝うことを忘れないで欲しいが、今年は新型コロナに苦しむ世界中の人を思い、みんなで祈りたい」と話した。例年なら多くの信者や観光客が詰めかける、バチカンのサンピエトロ大聖堂前広場に立てられたクリスマスツリーとキリスト生誕の場面の模型「プレゼピオ」にも人影はまばら。
教皇フランシスコが執り行うクリスマスイブのミサも、例年数千人の信者が参列するが、ことしは新型コロナウイルスの感染予防のため、大聖堂に入る聖職者は最小限に絞られ、参列者はおよそ100人と大幅に制限された。参列した人はマスクを着用し、互いに距離をとっていた。教皇は「試練の暗いトンネルから抜け出せないと不安になっていないか」と問い掛けた上で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が続く状況を念頭に「神は勇気を持とうと言っている」と呼び掛け、共に乗り越えたいとの考えを示した。
イタリアでは午後10時から夜間の外出が禁止されているため、ミサ開始も2時間早めて午後7時半からになった。
主の降誕の祭日25日正午から、教皇はローマと世界に向けたメッセージと祝福、「ウルビ・エト・オルビ」(ローマと全世界へ)で「私は全ての人、国家や企業、国際機関の指導者に呼び掛ける。競争ではなく協力を促すよう、全ての人のための解決策を見つけるように」と述べた。そして全ての人にワクチンを、特に、地球の全ての地域の最も弱く最も助けを必要としている人々にワクチンが行き渡るように、と教皇は願った。この祝福は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、バチカン宮殿の「祝福の間」で行われ、インターネットなどで配信された。(CJC)