2017年の発足以来、2カ月に1回のペースで研究会を続けてきた「教会と政治」フォーラム(山口陽一座長=東京基督教大学教授)の第18回例会が9月4日、Zoomによるオンラインで開催された。「ポストコロナ時代を生きる――生の全領域における課題の顕現と物語の再検討」と題して発題した濱野道雄氏(西南学院大学教授、日本バプテスト連盟鳥栖キリスト教会協力牧師)は、初めに「経済格差や人種差別など、コロナ禍以前からの課題が顕在化し、個人、地域、国、世界などの全領域にわたり『物語(アイデンティティ)の再検討』を迫られており、これまで通り命の選別をする物語か、異なる者が共に生きる物語かを選び取る岐路に立たされている」と指摘。かつてスペイン風邪が流行した際に、防疫に成功したと威張るリーダーがナショナリズムを煽り、第二次大戦に突き進んだという歴史を繰り返してはならないと警鐘を鳴らした。
また教会の課題について、「自らのアイデンティティや実際の使命が『現状維持』や『組繊維持』にある教会は、変化する状況下でニーズに柔軟に応えられない」とした上で、コロナ禍における試行錯誤を「従来の礼拝が、礼拝に行く体力、財力、時間があり、精神的・社会的に他者と会うことが苦痛でない多数派(マジョリティ)中心にできていなかったか、少数派(マイノリティ)を無意識にも締め出していなかったかを問い直す良い機会。講壇交換や合同礼拝など、今だからこそ生まれ得る豊かさもある」と、ポジティブに受け取れる可能性について示唆した。
一方で、リモート(オンライン)礼拝には身体性、共在性、共同体性が欠如しているとの批判に対しては、たとえ対面型の礼拝でも一方的で共同体性を伴わない礼拝もあり得るとしながら、使い方を工夫することでインターネット技術を単に身体性を「制限」するものではなく、「延長」するものとして活用できるのではないかと提起。リモート礼典(聖餐式)を検討する上での課題や個人的な見解についても紹介した。
同フォーラムでは、次回以降もオンラインでの開催を予定している。