教皇フランシスコ、米朝首脳会談について異例の早さで言及

 

大阪でのG20サミットを先月29日に終えたトランプ米大統領は、翌30日午後、韓国と北朝鮮を隔てる軍事境界線上にある板門店(パンムンジョム)に移動し、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と会談した。米朝首脳会談は昨年6月のシンガポール、今年2月のベトナム・ハノイに続いて3回目。非核化協議について、「2、3週間以内に(実務者)チームをつくって再開する」とトランプ氏は述べ、金氏と合意したことを明らかにした。

(写真: The White House)

バチカン・ニュース(英語)によると、教皇フランシスコはその日、日曜日正午に行われる恒例のアンジェラスの祈りの後、米朝首脳会談に触れ、こう語った。「数時間前に私たちは韓国で『出会いの文化』の良い例を目撃しました」(現地とバチカンは7時間の時差がある)。教皇がその日のうちにコメントを出すのは異例だけに、北朝鮮問題に強い関心を持っていることが分かる。

会談は、北朝鮮と韓国の間の非武装地帯(DMZ)で行われた。握手をした後、トランプ大統領は約1分間、軍事境界線のブロックを超え、現職の米大統領として初めて北朝鮮に足を踏み入れた。その後、両首脳は、国境の韓国側にある施設「自由の家」に移って、約50分にわたり会談を行った。その後、韓国の文在寅大統領も短時間そこに合流した。

教皇フランシスコは米朝首脳会談の「主人公」に挨拶(あいさつ)を送りつつ、こう祈った。「このような重要なアクションは、朝鮮半島だけでなく、全世界にとっての平和の道へのさらなる一歩でありますように」

左からドナルド・トランプ米大統領、教皇フランシスコ、メラニア夫人(2017年5月24日、バチカンで)(写真:Shealah Craighead)

昨年、シンガポールで開催された最初の米朝首脳会談では、トランプ氏と金正恩氏は具体的な詳細に入ることなく、朝鮮半島の「非核化」だけを約束した。今年2月のベトナムでの首脳会談は進展せずに決裂したが、両国は協議を再開するためにチームを立ち上げることに合意した。

教皇は4月、南北朝鮮の指導者に次のようなビデオ・メッセージを送っていた。「忍耐強く、粘り強い努力を通して、調和と一致の追求は、分裂と対立を克服することができます」

教皇は11月に来日するが、そこでトランプ米大統領にならって南北非武装地帯を訪問することになれば、大きくこの問題も動くかもしれない。

雑賀 信行

雑賀 信行

カトリック八王子教会(東京都八王子市)会員。日本同盟基督教団・西大寺キリスト教会(岡山市)で受洗。1965年、兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。90年代、いのちのことば社で「いのちのことば」「百万人の福音」の編集責任者を務め、新教出版社を経て、雜賀編集工房として独立。

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