日本福音ルーテル社団(JELA、東京都渋谷区)は5日、日本初の民間による無償のシェアハウス型難民シェルター「ジェラハウス(JELA HOUSE)」(東京都板橋区)の内覧会を開き、その後、完成祝福式を行った。
JELAの難民支援事業は1984年にスタート。当初は、次の4つのことを目的として活動してきた。①外務省より保護依頼のあった難民(インドシナ難民以外)で、日本への永住を希望する人々に対して、法務省から難民認定申請に対する結果が出るまでの期間、生活を援助すること。②日本以外の国への永住を希望する人々に対しては、日本に滞在する間の生活を援助し、移住可能な第三国を探すことの援助。③難民が日本で居住・生活することに対しての日本国内での啓発。④人種・宗教・政治などの背景を超えて、難民個人の立場に立った支援を行うこと。
在留難民の住居を確保するため、省庁からの要請によりジェラハウスが1991年に誕生。今回改築されたハウスは、耐震構造を備えた、より安全性の高い建物になった。
運営・管理は新たにNPO法人WELgee(ウェルジー)が行う。日本にやって来た若者たちが、本来持つ能力やスキル、個性を生かして活躍できるよう、最長1年間、伴走者という立場で入居者に関わる。有名な漫画家を輩出した「トキワ荘」のように将来のスーパースターを送り出したいという思いから、「TOKIWA(=トキワ)」というニックネームがつけられた。
JELAで事務局長を務める渡辺薫(わたなべ・かおる)さんはこう挨拶(あいさつ)した。
「28年間のジェラハウス運営の中で、JELAには、その長さゆえに感じる『壁』がありました。ジェラハウスに入ったけれども、次の人生に一歩踏み出すことができない。そのため、将来に希望のないまま定住化せざるを得ない人たちと、新しく入居を心待ちにする人たちとの葛藤があったのです。そんな中で出会ったのが、若い力あふれるWELgeeでした。WELgeeの存在は、その『壁』を突き破り、入居者に希望と力を与えてくれるでしょう」
WELgeeのメンバー全員が20代。代表の渡部清花(わたなべ・さやか)さんは、JELAとの出会いを振り返りながら次のように語った。
「3年前、難民支援団体を探していた時にJELAを見つけました。さっそく、私がやりたかった難民ホームステイについて話を聞いてもらいました。日本に来て全然知り合いのない人たちが友だちを作ることができたら、そこから社会とのつながりができるのではないか。その構想をJELAの人たちは受け止めてくださいました。自分が設定した目標に向かって歩んでいける場所を作っていきたと思います」
ジェラハウスは、国道から少し離れた閑静な住宅街にあり、2階建ての7部屋で、定員は管理人を含め10人。1階玄関を入るとすぐ共同ルームで、その奥に二つのシンクのある厨房と、複数で住める部屋が3室ある。2階は、6畳弱の部屋が4室、二つの洗面台、シャワー室、風呂場だ。トイレは1・2階の両方に設置されている。また収納スペースが多く、壁面にも無駄なく棚が取りつけられている。空調は、各部屋とすべての共同スペースに完備。
完成祝福式では、日本福音ルーテル・大岡山教会牧師の松岡俊一郎さんが「平和と祝福に満たされる家」と題してメッセージを語った。
「『どこかの家に入ったら、まず、『この家に平和があるように』と言いなさい……』(ルカ10:5〜9)とあるように、信仰も未熟で欠けの多い弟子をイエス様はあえて選び、まだ準備もできていないのに伝道に遣わされました。そこで弟子たちが頼れるのは、イエス様から遣わされたという使命と神様からの祝福だけでした。
私たちが始めようとしている活動も、これから作り上げていくものです。そこで頼るべきものは、私たちを用いてくださる神様と聖霊の力です。そこに神様の祝福が与えられます。それは、ジェラハウスに集う一人ひとり、そして世界で助けを必要としている人に向けられているのです」