世界祈祷日・東京で関野和寛氏 「壁を壊してテーブルを」

世界祈祷日の3月1日、準備委員会の主催による東京集会が日本基督教団阿佐ヶ谷教会(東京都杉並区)で開催された。

世界祈祷日は1887年、アメリカの女性たちが移住者や抑圧された人々を覚えて始めたことに端を発する。二度の世界大戦を経て、教派を超えた平和への希求から、現在では世界祈祷日国際委員会(WDP)が中心となり、世界中で毎年3月第一金曜日を「世界祈祷日」として集会がもたれている。

今年の主題聖句は「あなたがたに勧めます…愛をもって互いに忍耐しなさい」(エフェソの信徒への手紙4章1~3節)。平和のための祈祷と賛美が交互になされるプログラムで、毎年各国が受け持ちで式文を作成するが、今年はパレスチナが担当。世界平和を希求するとともに、今一人ひとりが何をすべきか思慮する時間となった。

登壇した関野和寛氏(日本福音ルーテル津田沼教会牧師)は、「強くはないけれど、咲き続けられる イスラエル・ヨルダンの国境にて」との題でメッセージを語った。昨年はウクライナだけでなく、イスラエルにおいてもほとんどの教会がクリスマス礼拝をささげられず、「祈るだけ、礼拝を守るだけという行為ができなくなってしまった」と率直な気持ちを吐露。クリスマスに奉仕した幼稚園で、「みんなクリスマスをどう過ごす?」と尋ねたところ、多くの子どもがプレゼントをほしがったという。関野氏は「世界には満足に食べられない子どもがいるけど、どうする?」と問い返したところ、ある子どもが「パンをあげる」と言った。そこで関野氏がうなずきかけた時に、別の子どもが呼応するかのように「ジャムもつけてあげなきゃ!」と叫んだ瞬間、希望の光が見えたという。

2018年、関野氏はパレスチナを訪れた際、イスラエルとヨルダンの二分する約500キロにわたる分離壁を目にした。そこはただのコンクリートの境界線ではなく、上には基地や兵士が存在し、かつてこの壁を触った子どもが銃殺される事件も発生していた。現地教会のリーダーが「壁に手を置こう」と呼びかけ、その中で「宗教も人種も超えて、いつかこの壁が横に倒されてテーブルになればいい、みんなが集える世界一のテーブルになればいい」と祈ったという。この時、先ほどの「ジャム」と同じく「私たちの不安や計算を超える祈りは、多くの自由をもたらす」と感じたという。

分離壁にはキリストの肖像も描かれ、その下に「壁のこちら・あちらという違いはない。ただ両側に神の子がいるだけなんだ」と記されていた。関野氏は「国や宗教を超えて、テーブルがなく安心して過ごす場所もない人々のために、皆さんの中の壁も一つ壊して、この場所でテーブルを作り、この場所から送れるパンを送りたい」と呼びかけた。同時に「祈っています」という言葉を避けるべきとも述べ、「いつ祈るか、誰のために祈るか、何をするのか」を問い直し、「みんなで集まって、知って、行動して、祈り、泣く時は共に泣き、笑う時は共に笑う」ことこそが世界祈祷日を覚える意味であると締めくくった。

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