「社会活動」か「伝道」かの二項対立越えて 東京基督教大学 キャリア支援室が特別講義

東京基督教大学(千葉県印西市)で2月5日、教会教職者を目指す学生らを対象に、将来の働き方、献身の形、教会への仕え方を学ぶためのセミナーが行われ、大学院生を含む約30人が参加した。主催したのは、同大で就職・進学・留学など進路に関する相談、カウンセリング業務を担うキャリア支援室(辻中保美室長)。

冒頭、本紙・松谷信司が「ジャーナリスト視点で見る教会の危機と展望――教会の現実から献身のあり方を問い直す」と題して、既存の制度が限界を迎える教会の現状から、主体的で魅力ある新しい宣教の形について問題提起した。これを受けて登壇した同大大学院2年の福士堅さんは、「地域と社会の『破れ口に立つ』教会の必要性を再確認できた」と応答。

福士さんが提言したのは、「福祉で宣教する教会」。貧困の問題と地域に孤立する核家族の問題から、教会が本来持つ居場所としての機能を問い直し、自身が実習中の日本聖契キリスト教団中原キリスト教会、NPO法人ホッとスペース中原での体験を紹介した。

高齢者、貧困、触法者などに寄り添う中で、「痛みを抱え生きづらさに生きる人々の隣に『いる』ことが、一人ひとりにとってみ言葉の真価を見出すきっかけになっている」と話す福士さん。

2010年の第3回ローザンヌ世界宣教会議で示された「ケープタウン決意表明(コミットメント)」以降、福音派の間でも「全人格的な統合的宣教」の重要性が語られてきた。「受肉した教会として、社会の破れに立つ人々と有機的な交わりを持つことが、結果的に一人ひとりの魂の救いへとつながることを忘れずにいたい。『教会の危機』から始める宣教を、同じビジョンを持つあらゆる人々とともに、神からの知恵をもって、これからも模索し続けていきたい」との思いを吐露した。

セミナーの企画に携わった同大神学部准教授の森田哲也さんは、社会的な活動と「言葉による福音伝道」との一体性を、教会や地域の文脈でどう捉えるのかについて改めて考えたと振り返る。参加した学生からは、「変えていくべき部分、変えなくていい部分は何か」「活動したくても、そもそも働き手が少ない」「宣教師をうまく活用すべき」「社会の求めに応えるのが教会の本分なのか」などの声が聞かれた。

「社会的活動」と「伝道」の二項対立構造を超えるには、既存の組織体としての教会の体質の限界を正しく認識する必要がある。「持続可能な教会になるために必要なこと」と同時に、「持続可能な社会の構築のために、教会・個々のクリスチャンに求められること」は何かという問題設定も必要だろう。

「この二項対立の構造にある緊張関係を手なずけながらもしなやかに、自由に生きる主体として、まず自分の頭で考え、行動する体質を養うべき」と話す森田さん。教会の現状は、組織的存続に固執した議論に終始している間に、足元が瓦解し始めていることを外から指摘されて初めて気づくような状態だと見る。今回、神学用語が飛び交った後半のディスカッションについても、「それらの用語の内実を社会的文脈でどれだけ捉えようとしているのかを考え、そこに示された意味を有機的に束ね、地に足をつけてキリストを証しするのは、教室ではなく現場であることも認識させられた」という。

「社会のニーズに応え、み言葉さえ語っていれば神の国が自動的に訪れるといった短絡的な思考回路を改め、安易に宣教方法を教えてくれる『戦略自動作成機』のようなものは存在しないことを肝に銘じながら、現場で苦闘し続ける宣教者の育成が必要ではないか」。大学、教派、教会の枠を超えた今回のような学びが、今後の教職者養成にどう結実していくのか。

キャリア支援室では引き続き、献身について模索する学生に寄り添ったサポートを続けていく。

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