アリスター・ベッグ氏のLGBTQに対する配慮めぐり「配慮」か「妥協」かで激論

オハイオ州チャグリン・フォールズにあるパークサイド教会の牧師であり、ラジオ番組「Truth for Life(TFL)」の司会者でもあるアリスター・ベッグ氏の発言がここ数週間、アメリカのプロテスタント教会で話題となっている。「クリスチャニティ・トゥデイ」が報じた。

事の発端は昨年秋、同氏がキリスト教メディアTFLのインタビューで「孫の友人がトランスジェンダーの友人と結婚することを聞いて、結婚式へプレゼントを持っていき、あなたの愛を示しなさいとアドバイスした」と発言。これが一部ファンや支持者、特に保守的なカルヴァン派やその他の福音派コミュニティの人々を中心にSNS上で物議を醸した。

公共宗教研究所(Public Religion Research Institute=PRRI)によると、白人の福音派は米国の宗教団体の中で最も同性婚を支持しない団体の一つであり、彼らにとってはプレゼントを渡す行為も同性婚を黙認しているに等しく、これまで同性婚に反対の立場を示していたベック氏の言動に対し、さらに議論は過熱した。

PRRIによると、白人福音派の38%が同性婚を支持すると答え、対照的に非宗教者の87%、ユダヤ教徒の81%、仏教徒の77%、白人主流派プロテスタントの77%、カトリック教徒の約4分の3が同性婚を支持している。

ほとぼりが冷めない中、ベッグ氏は1月末の説教で「イエスは敵を愛せよと言った。クリスチャンは道を踏み外した人々に対して、非難するのではなく、憐れみを示すべきだ」と反論も交え語った。

しかし事態は収束せず、ベッグ氏の発言は神学界にも波及し、3月に予定していたJ・マッカーサーが主催する改革派牧師の主要な集会「シェパード会議」での講演を降板、また福音主義放送ネットワークであるアメリカン・ファミリー・ラジオのベッグ氏の説教に基づく番組「トゥルース・フォー・ライフ」も終了した。さらにグローブ・シティ・カレッジで聖書学・宗教学の教鞭を取るカール・トゥルーマン氏は、カトリック系雑誌『ファースト・シングス』で「結局のところ愛を示すため、あるいは不快感を与えないために出席することは名前がないだけで祝福の一種である」と批判した。

これらの活動に対しベッグ氏は「長い間、男女間の結婚以外の性行為は間違っているなど、保守的な発言・立場にあったのに自分に対する論争や、その中で〝キリスト教の教えを捨てた〟という非難の声には非常に驚いている」とコメント。配慮に基づいた自身のアドバイスが、予想以上に否定的な形で波紋を呼んでいることは心外だと表明した。

別の日の説教で同氏は「放蕩息子」(裁きよりも赦しを強調)と「善きサマリア人」(聖性の主張よりも憐れみを強調)を引き合いに「どちらのたとえ話も神の恵みの力を示している」と語り、他人に恵みや赦しを示そうとしないように見えるクリスチャンについて警告し、罪人を声高に非難したがる牧師に注意するよう促した。最後に「もし私が性的マジョリティか性的マイノリティか、どちらかを選ばなければならないなら、思いやりの必要な側につく」と述べた。

(翻訳協力=福島慎太郎)

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