Q.カトリック教会では、バチカンの決めたことに必ず従わなければならないのですか?(20代・女性)
カトリック教会の外面上の特徴は、教皇を一致のしるしとする教会の運営組織にあると言われます。ローマ帝国期に作られた教会組織の基本的枠組みは、現在に受け継がれています。
教会の運営(牧会・司牧)は、地域を基本としており、信者は皆、住んでいる地域の教会共同体に属します。これが教区で、司祭の中から選ばれる一人の司教(bishop)によって導かれます。司祭(いわゆる神父)は司教を補佐して、教区内に点在する教会に集まる信者の世話や宣教にあたります。司教は、ペトロをかしらとする使徒の後継者です。どの司教も、その前任者たちを遡っていくと皆、イエスが選んだ使徒にたどり着きます。そこに断絶はありません。
神の福音は、イエス・キリストによって使徒たちに啓示され、使徒たちとその正統な後継者は、これを誤りなく次世代に伝える役割を担いました。神の啓示は、人間の知恵ではなく、神に由来します。人間が自分の考えや好みで勝手に解釈したり変更したりできるものではありません。主が示されたとおりに伝えるのです。
その意味でカトリック教会は、使徒継承の教会と言われます。教皇は使徒たちのかしらの後継者。つまり司教たちのかしらとして、イエス・キリストの啓示を誤りなく伝えることが、主な任務の一つです。これを教導職と言います。
でも、かしらだからと言って一人で何でも決められるわけではありません。信仰と道徳の根幹の教理に関して教皇が下す決定は、使徒たちの後継者である全司教との一致が不可欠です。教導職によって信仰箇条と宣言された事柄に関しては、すべての信者は従わなければなりません。ちなみにバチカン(教皇庁)は、教皇の事務局です。その判断には間違いもありますから、事務局の決定などに異議を申し立てる制度も存在します。
*本稿は既刊シリーズには未収録のQ&Aです。
ひらばやし・ふゆき 1951年フランス、パリ生まれ。イエズス会司祭。上智大学大学院神学研究科博士前期課程、教皇庁立グレゴリアーナ大学大学院教義神学専攻博士後期課程修了。教皇庁諸宗教対話評議会東アジア担当、(宗)カトリック中央協議会秘書室広報部長、 研究企画部長などを経て、日本カトリック司教協議会列聖推進委員会秘書、上智大学神学部非常勤講師。