牧師ら起業 京都に社会貢献型ホテルオープン 宿泊でシェアハウスを応援

 二条城をはじめ歴史と伝統ある文化遺産が観光客で賑わう11月、日本初の社会貢献型ホテル「HOTEL ECCLESIA(エクレシア)」が京都市内に開業した。2024年4月に併設されるシングルマザー向けシェアハウス(入居募集は2024年1月より)へ、宿泊代の10%が寄付される仕組みだという。牧師のかたわら会社を起業し、現在は「プロジェクトマネージャー」を務める吉岡恵生(やすたか)さん(日本基督教団高槻日吉台教会牧師)に話を聞いた。

――そもそも、なぜホテルを始めようと思ったのですか?

吉岡 もともとは何か社会に貢献できることをしたいと思い、他の事業の準備を進めていたのですが、ある人との出会いから、シングルマザー世帯への支援の必要性に気づかされるようになりました。母親だけでなく、その子どもたちも含めて、コミュニティからの孤立という課題があることを知り、シェアハウスを作ろうと考えました。しかし、その運営には費用がかかります。また、プライベートスペースとシェアスペースを十分に確保するための建屋的な課題もありました。

そんな時、コロナ禍の影響により撤退したホテルがあるという話が舞い込んできたのです。ホテル経営の経験はもちろんありませんでしたが、何とかホテルとシングルマザー向けシェアハウスを組み合わせた事業を展開できないかと考え、数カ月のうちに営業許可などを得て準備を整えました。

――京都には競合するホテルが多々あると思いますが、特徴などはありますか?

吉岡 広々とした客室が最大の魅力です。1部屋に5人まで宿泊できる客室も用意しており、子どもづれの家族をはじめ、友人同士での利用にも適しています。各客室に設けられた和室エリアには、心が落ち着く畳調のクッションフロアを採用しており、乳幼児でもくつろぐことができます。子ども用のおもちゃの貸し出しや、有料サービスとしてオムツや粉ミルク、レトルト離乳食品などが用意されているのも特徴です。

――ホテルの名前の由来を教えてください。

吉岡 「ECCLESIA」とは、古代ギリシャ語で「人の集まり」や「集会」「共同体」を意味する言葉で、後に「教会」を意味する言葉にもなりました。宿泊いただく皆様には、当ホテルでの滞在を通して、大切な方々とかけがえのない憩いの時間をお過ごしいただき、共に集うことの喜びを再発見していただければと思っています。

――「プロジェクトマネージャー」とは、具体的にどんな仕事をされているのですか?

吉岡 私に与えられた重要な「プロジェクト」は、ホテルの経営とシェアハウスの運営を両立させることです。ホテルの経営は株式会社グレープヴァインが担い、シェアハウスの運営は一般社団法人みをつくしが担いますが、両者は車の両輪のようなもので、どちらが傾いてもこのプロジェクトを前に進めることができません。そこで私は、この両輪がともに前進できるように、両者を結び、全体を統括する役割を担っています。

――さまざまな牧師の副業について聞いたことはありますが、ホテルの経営は珍しいのでは?

吉岡 ホテル経営と聞くと牧師らしからぬ働きに聞こえるかもしれませんが、私がしていることはあくまでも人と人をつなぐことであり、牧師だからこそできることでもあると思っています。ホテルのお客様には外国人の方々も多く、その中にはキリスト者の方々もいます。私が牧師であると聞くとハグをしてくださり、一緒にお祈りをしたこともあります。その意味で、私にとってこの働きは副業というようなものではなく、牧師としての本業そのものだとも思っています。

――牧師業と両立する上で課題も多いと思うのですが……。

吉岡 高槻日吉台教会の方々の理解なしに、教会の外での働きはできません。実は、私はホテルだけでなく、近隣のキリスト教学校で聖書科の非常勤講師もしているのですが、教会の皆さんは私の忙しさを心配してくださりつつも、いつも祈りをもって支え、送り出してくれています。かつてパウロがアンティオキアの教会の信徒たちに祈られ、送り出されたように、私の働きは単なる個人的な働きではなく、本務地である高槻日吉台教会の信徒たちの祈りによって派遣された、教会の働きでもあると思っています。

――メディアでも注目を集めているようですが、現時点での反響などありますか? 

吉岡 まだ実感はありませんが、こうした働きが注目されるとすれば、社会に対するキリスト教の新たな役割を、内外に向けて発信していくことができると思うので、与えられる機会は最大限に活かしていきたいですね。

――今後、会社として取り組みたいこと、展望などあればお聞かせください。

吉岡 会社ではホテル事業に加えて、キリスト教葬儀への牧師派遣事業、キリスト教学校のためのコンサルティング事業、また、キリスト教メディアの一端を担う事業を展開しています。まだ創業から1年しかたっていませんが、これらの働きが教会の宣教とも結びつき、用いられていくことを願っています。社会との新たな接点を求めて教会という枠組みを飛び出し、会社という体裁で活動していますが、私たちがいつも心に留めていることは教会の宣教です。

――ありがとうございました。

【HOTEL ECCLESIA】
住 所:京都市中京区西ノ京永本町23
定休日:なし
客 室:23室(定員115名)
URL:https://htl-ecclesia.com/

 

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