モスクワで、ジェリー・ピレイ総幹事、ピーター・プローブ国際担当ディレクター、バシレ・オクタヴィアン・ミホック・エキュメニカル関係・信仰と秩序のプログラム・エグゼクティブからなる世界教会協議会(WCC)代表団が5月17日、ロシア正教会のキリル総主教と会談した。
前週にウクライナを訪問したWCC指導者代表団は、ウクライナ正教会(UOC)と正教会ウクライナ(OCU)の双方から、WCCが招集する対話プロセスに参加する基本的な意思を確認していた。ピレイ氏は、「ウクライナ社会の統合と統一は、特に多数派のキリスト教正教会信者の間を含め、ウクライナの国家と国民が直面している現在の状況において明らかに必要なことである」と述べた。
「私たちは、戦争とその結果に関する対話にロシア正教会も参加することについて話し合うためモスクワを訪れ、この文脈における正教会一門の深い分裂に関しても話し合った。この可能性を探るためのキリル総主教聖下のコミットメントに感謝している」
キリル総主教との会談で、ピレイ氏はWCC代表団が訪問した重要な理由を四つ挙げた。
1.現在の戦争に終止符を打つ必要性
2.このような状況の中で深刻に分裂している正教会一門の一致を図ること
3.戦争と暴力の問題に取り組むにあたり、キリスト教徒の内部と外部の両方で平和構築における教会の役割を話し合うこと
4.すべての関係者の参加を得て、これらの問題を扱う最初の円卓対話集会を提案すること
会議の中でキリル総主教は、困難で分裂しやすい問題に対する教会間の対話のための招集者でありプラットフォームであるWCCのユニークな役割を再確認し、過去のWCCの活動、特に冷戦後の平和構築におけるWCCの役割について、自身の記憶、経験、感謝の念を共有した。また、世界の多くの地域でキリスト教徒に対する攻撃が行われていることへの懸念を強調し、信教の自由の促進におけるWCCの歴史的かつ継続的な役割に感謝を表明。特にウクライナの状況において、正教会一門内で不和が拡大していることを取り上げ、信者が進むべき道として平和を求める必要性を強調した。
キリル総主教は、外部からの影響が根強く、円卓会議の実現性に懸念を示す一方で、この提案に喜びを示し、平和と統一に向けて活動しているWCCを賞賛。また、円卓会議への参加に意欲を示したが、まずはロシア正教会内部で協議する必要があるとの見解を示した。
ピレイ氏は今回の会議を振り返り、対話のための努力が乗り越えなければならない大きな課題を認識した。「紛争、その原因、そして公正な和平への道に対する見解が、依然として大きく二極化していることは明らか。しかし、このことは対話のための安全な空間を作り出す努力の重要性を強調しているにすぎず、WCCにとってこれは、現在の地政学的対立を反映している正教会内の溝を埋める試みから始めなければならない」と結論づけた。
ピレイ氏は「これは、私たちを分断する問題について、教会間の対話の道具となるためのWCCの目的と使命の本質である。私たちは、平和を作る者であるというキリスト教の召命にコミットしており、ウクライナや今日の世界の状況に直面している教会は、その召命に応えるために共に闘わなければならない」と話した。
(翻訳協力=中山信之)