政府が古い原発の運転期間延長や新型炉への建て替えを柱とする基本方針を決めたことを受け、日本福音ルーテル教会社会委員会(小泉 基委員長)は12月26日、原子力政策転換の撤回を求める要望書を発表した。
要望書は「可能な限り依存度を低減していく」としてきたこれまでの政府の方針には、「原発を維持していくことの様々なリスク」が前提となっていたにもかかわらず、「もともと40年を耐用年数としていた原発を60年を越えてさらに稼働させること」は「当初の設計を無視した愚行」であり、「総合的に見て経済的にも合理性のある政策とは思え」ないと批判。
「重大な政策変更を、充分な議論も将来的な見通しもないまま強行することは、この国の民主主義をも危険にさらすことになる」とし、「事故の惨禍から学んだ教訓を思い起こし、何が将来への責任を果たす道であるかを真剣に考えるべきとき」「原発に頼らない新しいエネルギー政策へと踏み出していかれますよう、強く要望する」と訴えた。
要望書の全文は以下の通り。
内閣総理大臣 岸田文雄 様
原子力政策転換の撤回を求める要望書
わたしたちは、現在政府が閣議決定を目指している原子力発電所への依存をすすめる原子力政策の転換に反対致します。
政府の今回の方針転換は、休止中の原発の再稼働の加速、古い原発の運転期間延長、新型炉への建て替え促進が柱となっています。
震災以降、「可能な限り依存度を低減していく」としてきたこれまでの政府の方針には、この国が地震大国であることばかりではなく、軍事的な攻撃目標ともなり得ること、未だ「核のゴミ処理」の道筋が立たないことなど、原発を維持していくことの様々なリスクを前提としていたはずであり、それなりの理由があったはずです。
現在多くの原発の休止が継続しているのは、稼働させることのリスクが勘案されているからであって、それらは一朝一タに解決される類のものではありません。また、もともと40年を耐用年数としていた原発を60年を越えてさらに稼働させることも、そもそも当初の設計を無視した愚行であって、老朽化した原発の事故リスクの増大は明らかです。新型炉への建て替えに至っては、建設地の反対も予想されるなど、総合的に見て経済的にも合理性のある政策とは思えません。
3.11の震災・原発事故の傷跡は今なお深く、多くの人たちが住み慣れた土地に戻ることが出来ずに避難生活を余儀なくされています。使用済み核燃料や放射性廃棄物の処理問題にも解決の道筋が見えず、一旦事故が起これば、健康被害、経済的な疲弊によって、日本と周辺地域の将来を脅かすことになるのです。
これら重大な政策変更を、充分な議論も将来的な見通しもないまま強行することは、この国の民主主義をも危険にさらすことになるでしょう。
事故の惨禍から学んだ教訓を思い起こし、何が将来への責任を果たす道であるかを真剣に考えるべきときです。政府には、この度の政策転換を見直し、原発に頼らない新しいエネルギー政策へと踏み出していかれますよう、強く要望する次第です。
2022年12月26日
日本福音ルーテル教会 社会委員会
委員長 小泉 基