聖路加国際病院チャプレン「性暴力」訴訟 原告・被告らが本人・証人尋問

聖路加国際病院(東京都中央区)で難病治療に伴うケアを受けていた女性患者が、スピリチュアルケアを担当する日本基督教団所属の牧師(チャプレン)A氏から性被害を受けたとして、牧師と病院を運営する聖路加国際大学を訴えていた裁判で10月7日、原告の女性、被告のA氏、女性看護師、男性医師による尋問が行われた(東京地裁・桃崎剛裁判長)。

訴状などによると、女性は2016年12月に同病院へ転院後、17年5月、2度にわたって院内で牧師と面会中、性被害にあったとしている。牧師は18年9月、強制わいせつの容疑で書類送検されたが、同12月に嫌疑不十分で不起訴処分となっている。原告の女性は、日本基督教団や日本スピリチュアルケア学会、病院の使用者責任に関与する日本聖公会にも救済を求めたが、誠実な対応がなされず二次的、三次的に苦痛を受けたと主張。真相究明と尊厳の回復を求め続けている。

A氏は7日の本人尋問で、「職業倫理に反する」行為自体を認めたものの、マッサージは女性からの提案によるもので、黙示の合意があったと反論した。

2021年11月に発足した「聖路加国際病院チャプレンによる性暴力被害者を支援する会」(有住航、大嶋滋子、清水和恵、原田光雄、吉髙叶共同代表)は、同裁判の支援を訴え、「被害事件を他人事としたり、特別化するのではなく、一人ひとりが自分の事として捉え、また誰もが被害者にも加害者にもなりうることを、しっかりと受け止めていきたい」「多くの方々とご一緒にこの事件の真相を共有し、キリスト教会(教界)に問いかけられている課題を、きちんと受け止めていく対話やプロセスづくりが必要」としている。

判決の言い渡しは12月23日、東京地裁712号法廷で。これに先立ち12月6日(火)午後7~9時には、日比谷図書文化館(東京都千代田区)セミナールームAで「支援する会」主催のシンポジウム「聖路加国際病院チャプレンによる性暴力事件が問いかけるもの」も開催される。問い合わせは同会(churchmetoo@gmail.com、Tel 090-8894-0878・大嶋、080-2877-4095・清水)まで。

事件発覚当時、「被害者の話を一方的に取り上げてチャプレンを凶悪な性的虐待者に仕立て上げ」たとして「加害者」とされるA氏を擁護した「A牧師を支えて守る会」の深谷美枝氏(単立横浜聖霊キリスト教会主任牧師)は、本紙の取材に対し「刑事事件で不起訴になった時点で会自体は解散している。(A氏)本人から直接聞いてきたことを真実として信じるしかないという立場に変わりはない。長年、身内同然のように協力しながら仕事をしてきて、信用しないのは難しい」とコメントした。ただA氏はその後、教会を辞し、現在、深谷氏とは音信不通になっているという。

聖路加国際病院チャプレン 所属教会が声明「一方的な報道」に遺憾の意 2018年9月19日

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