東京拘置所に収容されていた加藤智大さんに7月26日、死刑が執行されたことを受けて、キリスト教界から抗議の声明が相次いで発表された。
日本カトリック正義と平和協議会(ウェイン・バーント会長)は同日の抗議声明で、「カトリック教会は、イエス・キリストが示した福音の光によって、すべての人のいのちは尊く、たとえどんなに重い罪を犯した人であってもその人格の尊厳は決して失われないと固く信じています」と強調。ミャンマーでの死刑執行に国際社会から多くの懸念と非難の声が上がっていることに触れ、「日本政府が同じ轍を踏み、国際的な地位を自ら貶める暴挙に至ったこと」を憂慮。「死刑という暴力によっては、決して平和な社会を築くことはできません。むしろ時代に逆行するその野蛮さが、新たな暴力を生み出すことになるからです」と訴えた。
日本聖公会正義と平和委員会の上原榮正委員長と同管区事務所の矢萩新一総主事は27日に抗議声明を発表。複数の無差別殺傷事件にはそれぞれ独自の背景があるものの、深いところでつながっており、「人が生き難くされているこの社会に、重大な問いかけがなされているように思われます」と述べた。その上で、遺族や関係者への精神的、経済的な支援とともに、二度と同じ過ちが繰り返されない社会を作ることを求め、そのためにも「犯罪とそれに関わる社会的背景の徹底的な究明」と「人の命と尊厳が尊重され、孤立を生まないための社会的セーフティー・ネットの構築とその周知」が急務だと訴えた。
日本キリスト教婦人矯風会(飯田瑞穂、鏡清美理事長)も27日の声明で死刑執行に抗議するとともに、「加藤智大さんに命を奪われ、傷を受けた多くの被害者、ご遺族の心情ははかり知ることができません」と述べ、被害者への国の支援を要請。死刑の執行は世界の潮流に反しているとし、「死刑制度が犯罪の抑止力になっていないことは、人生に絶望し誰でもいいから殺して死刑になろうという衝撃的な事件が繰り返し起こっていることでも明らか」だと主張した。