2年ぶりに対面で聖書協会共同訳セミナー 小友氏「黙って待つのではなく、与えてくださる神を信じて力を尽くす」

コロナ禍で長くオンライン化を余儀なくされていた聖書協会共同訳セミナーが6月18日、日本基督教団鎌倉雪ノ下教会(神奈川県鎌倉市)を会場に約2年ぶりに対面形式(オンライン併用)で開催された(日本聖書協会主催)。今回は「明日に向かって種を蒔け――旧約聖書の知恵と預言」と題して、同訳詩書・預言書編集委員の小友聡氏(東京神学大学教授)と岡野絵里子氏(詩人)が招かれた。対面参加は150人限定だったが、当日前には予約でほぼ満席となった。

会に先立ち、同教会主任牧師の川崎公平氏があいさつ。同氏は主日礼拝の説教でもたびたび同訳を紹介しており、「コロナを理由に新しい翻訳聖書の検討を先延ばしにしていたが、これを機に議論を深めていきたい」と、前向きな姿勢を示した。

近年、神とイスラエルの契約関係が男女の恋愛にたとえられた書として解釈されている雅歌の翻訳について岡野氏は、「雅歌というと、『雅楽』のエレガンスなイメージがあるが、『雅』という言葉には俗とは異なる格調の高さと正統性、人の心・恋愛に通じること、即興性、率直大胆な意思表出という四つの意味、美点がある。この美点を守って翻訳に関わった」と解説。また、「人が人を愛して生きるというのは幸福なことであり、その歌が聖書の中にあるということは、その営みを神が許し、喜び、祝福し見守っていてくださるということ。雅歌を訳す時に、どこかで神のまなざしが注がれているようなニュアンスを出せるように翻訳事業に関わった」と、恋愛の歌としての価値も改めて評価した。

ウクライナ侵攻のことを念頭に、聖書と平和について話を振られた小友氏は「シャローム」という言葉を挙げ、平和という意味の他に、安全、調和、秩序、補い、幸せ、福祉、健康などの意味があることを紹介。「シャロームとはただ単に戦争がない状態ではなく、敵対関係があっても、調和が保たれているという状態。また秩序を回復しバランスを保つ」ということであるとし、例としてイエス・キリストの十字架の出来事による、神と人との和解の状態への回復、秩序の回復を挙げた。そして「聖書には神様が働いてシャロームを与えてくださるという信仰、希望がある」と語った。

また、シャロームにおける人の役割についての問いには、「神が与えてくださるものだが、待っていれば来るというものではなく、それを導いてくださるのが神である。神は必ずシャロームを与えてくださる。だから争いに和解がもたらされるよう、秩序が戻るように一生懸命、最善を尽くす。これが大事。ただ黙って見ているのではなく、与えてくださる神を信じて、力を尽くす。これが聖書の教えだと思う」と応答した。

このほか、イスラエルの歴史、旧約における預言者や疫病、苦難、苦しみ、コヘレト書の言葉についてなど、話題は多岐にわたり、聴衆は旧約学者と詩人の言葉に耳を傾けた。

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