日本キリスト教文化協会(近藤勝彦理事長)は4月11日、オンライン講演会「主の道を生きて――『加藤常昭説教全集』全37巻完結を記念して」をYouTubeで公開した。日本基督教団若草教会、牛込払方町教会、鎌倉雪ノ下教会で牧会し、説教塾を主宰した加藤常昭氏の説教集完成を記念して企画されたもの。聞き手を森島豊氏(青山学院大学宗教主任)が務めた。
同氏は初めに鎌倉雪ノ下教会へ就任した当時を回想し、教会が分裂状態にあり、最初の礼拝出席者が95人であったが27年間の牧会を経て最終的に自身が退任する際には礼拝出席者数400人にまで拡大したと語った。加藤氏が牧会をする上で大切にしていたことは「顔と名前を覚えること」。当時の役員たちと協力し、礼拝出席をしていたすべての人たちを把握していた。
そんな加藤氏も伝道が拡大するとともに自身が職業としての牧師という立ち位置に安住している感覚に陥り、行き詰まりを覚えていた。そのころ、たまたま立ち寄った教文館で手にしたトゥルナイゼンの『牧会学』に出会い、自身の中から「商売根性」が抜けたという。
また加藤氏は自身が説教をする上で大切にしていることとして「生きたキリストを指し示すこと」を挙げた。その際加藤氏の母親にも洗礼を授けた植村正久の言葉を引用しつつ「医者に必要なことは病の宣告ではなく、病の癒し」であると述べ、説教においてはイエス・キリストを指し示す他ないと語った。またそのためには「気合」も必要であるとも語った。加藤氏にとって説教とは勝負であり、しかもそれは主イエスに勝負をしていただく場であった。ゆえに説教者も常に真剣でなければならないと述べる。
最後に加藤氏は視聴者へのメッセージとして、ポストモダンの時代における宣教について語った。ポストモダンとはひと言で要約すれば「なお一層神を信じることが難しくなる時代」であり、伝道も容易ではないと語る。しかし説教とは、その時代ごとに言葉を見つけることであると述べ、「私たちの説教をなぞってはいけない」と戒めた。その上で、「折々の言葉でイエス・キリストを紹介してきた」営みこそが説教であるとし、今後の伝道者たちには優れた時代感覚を持ちつつ、み言葉の奉仕に務めるようにと激励した。