NCC、平和ネット、正平協の第2回祈祷会 松浦司教と中野晃一氏が対談「残酷さへの慣れは非人間化の始まり」 2022年5月1日

日本キリスト教協議会(NCC)、キリスト者平和ネット、カトリック正義と平和協議会(正平協)による「ウクライナを覚えるオンライン祈祷会」の2回目が4月19日に行われ、カトリック名古屋教区司教の松浦悟郎氏(ピースナインの会呼びかけ人)=写真右=と政治学者の中野晃一氏(上智大学教授)=写真左=の対談に約130人が耳を傾けた。

日々流される戦争報道に接する中で、その残酷さに慣らされてしまっていると指摘した松浦氏は、「怒りを忘れ、無関心になることも非人間化の始まり。遠い国の話ではなく、私たち自身の問題として捉えるべき」と警鐘を鳴らした。

これに対し中野氏も「人間性を捨象した〝戦況報告〟など、戦争のロジックにとらわれず、正気を保つ努力が必要」と応じ、「軍隊の中で日常的に人間性をはく奪されるということが、日本も経験した戦争の実態。互いに人間性を回復していく営みこそが戦争を終わらせるために必要」と述べた。また、軍事同盟の強化によって身の安全を図ろうという世界的な流れの中で、戦争を防ぐために抑止力を高めるという「安全保障のジレンマ」が引き起こす際限のない軍拡競争を危惧。

メディアで露出の多い安全保障の「専門家」が、軍事同盟のメリットばかり強調することに触れ「ジャイアンと組んでいれば安全という安易な考え」と批判し、「大国のエゴが国際協調の歩みを止めてしまっている現実がある。これ以上戦争を拡大させないために、非武装で平和を作るために市民社会の側から国際的な連帯を築いていくことが重要」と提起した。

松浦氏は「無力感で何もしないという誘惑に陥らず、平和の主に応える信仰に基づき、どんなに小さな種でもまき続け、決して無駄にはならないと信じて平和を祈り続けよう」と呼び掛けた。

NCC総幹事の金済性氏は閉会のあいさつで、「専制主義と自由主義という図式の中で、世界が分断され、不信感と敵意の壁が立ちはだかっている。戦禍の中にあるロシアもウクライナもキリスト教を中心とする国であり、ロシア正教との間に深い溝があることを認め、主の前に懺悔しなければならない。東アジアで他国の脅威からどう身を守るかというロジックに取り込まれず、現実と本質を直視する心をどう研ぎ澄ませていくかが問われている」と結んだ。

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