ウクライナではすでに1000万人以上が侵攻のために自宅を離れ、近隣諸国には420万人が避難している。日本YMCA同盟(田口努総主事)は、ウクライナ侵攻直後から現地と近隣諸国で救援活動を行ってきたヨーロッパYMCAと連携し、グローバルネットワークを活用しつつ、家族や関係者の日本への避難を支援している。
発端は3月初旬、日本で暮らすウクライナ人から同盟に寄せられた親を呼び寄せたいという相談だった。迅速な連携を図り、この64歳の女性は3月18日に無事、羽田空港に到着。家族との再会が実現した=写真上。その後も、国内外から避難民受け入れ支援に関する相談や依頼が後を絶たず、すでに29件67人の入国が決まっている。特に自ら経済的に呼び寄せることが困難な日本で暮らすウクライナ人の留学生や低所得層、日本に避難したくても身寄りのない人々からの相談が多く、ウクライナからの第三国への避難、第三国での滞在やビザ取得、来日まで、避難者本人、日本での受入れ先、現地のYMCA担当者と密なコミュニケ―ションを取りながら進めている。
「残された家族が心配」「サイレンに反応」
受け入れ後も課題山積
今後も避難者の来日が続くことが予定されることから、4月12日には全国のYMCAやワイズメンズクラブ関係者に受け入れ支援の協力、さらなる募金の呼びかけを目的にオンラインでの報告会が行われた。
報告会では、日本への避難に関する課題として、日本到着まで1人あたり最低25万円の渡航費用がかかること、なじみのない国への移動に不安を抱える現地の親、家族を説得する必要があること、成人男性が出国できずに支援対象が高齢者、女性、子どもなどに限られることなどを吐露。また、出国するまでにもビザの取得やPCR検査に時間を要すること、避難時にパスポートを所持できていない、英語ができず言葉が通じないなどの障害が立ちふさがる。また、日本へ到着後も数時間に及ぶ検疫検査、相談窓口の不足、短期滞在ビザでは住民登録できないため、保育園や学校に通えないなどの課題も山積しているという。
報告会では無事に入国できた避難者の家族らも参加し、入国までの経緯や労苦、不安な心境などを共有。YMCAの関係者ら約200人が話に聞き入り、支援の可能性などについて模索した。
大阪市在住のイリーナさん=写真下=はYMCAの支援により、4月11日に母(63歳)と姪(12歳)の受け入れを果たすことができた。しかし、ドネツク地方に残った姪の両親の安否が気がかりで心休まることはない。2人が避難した移動距離は約1600キロ以上。到着後、パトカーのサイレンや大型車の音に敏感に反応する姪の姿に心痛め、テレビでは極力ニュースを見せないように配慮しているというイリーナさん。時折、声をつまらせながら苦しい胸の内を語った。
日本YMCA同盟では、4月30日まで緊急支援募金を呼び掛けている。寄せられた募金は、ウクライナYMCAが行う、爆撃地や攻撃を受ける可能性のある居住地域から国内避難する人々への支援活動、ウクライナ近隣諸国のYMCAによる避難民への生活支援のために用いられる。ウクライナYMCAは国内25拠点を用い、宿泊場所提供、食品、衣類、医薬品、衛生製品を提供。恐怖心・トラウマを抱える子どもと若者に、心理的、社会的な緊急サポートを行う。募金の詳細は公式サイト(https://bit.ly/3vmBii8)から。問い合わせは日本YMCA同盟(Tel 03・5367・6640)まで。