緊迫するロシア/ウクライナ情勢について2月27日、ロシア正教会の最高指導者モスクワ総主教キリル1世=写真=は教区民に対し、ウクライナにおけるプーチン大統領の敵対勢力について「邪悪な勢力(evil forces)」と改めて語った。AFPなど複数のメディアが報じている。総主教キリル1世は2019年12月にも、正教会内部の一致に関わる問題として「邪悪な勢力(evil forces)」と発言している。なお「総主教」は歴史的教会の高位聖職者を意味し、教皇と同位の教会首長を意味する。
発言の背景には、正教会世界において2014年以来、特に激しくなった教会法上の問題「ウクライナ正教会の独立・自治」についての議論がある。したがってキリル1世の発言は、今回の戦争のみを背景に理解されるべきものではない。しかしロシアとウクライナ両国の歴史的・宗教的な背景、また政治と領土問題などが複雑に絡み合う最中でのロシア最高位の宗教指導者・キリル1世の発言は人々の耳目を集めざるを得ない。
同日、ローマ教皇フランシスコは停戦と平和を呼びかけた。ウクライナのゼレンスキー大統領がSNSを通じて抗戦を呼びかけるなど、インターネットを通じて戦況とそれを取り巻く言説が世界中に発信されている。
「バチカン・ニュース」の報道によると教皇は2月26日、ゼレンスキー大統領と電話で会談。駐バチカン・ウクライナ大使館が、「教皇は私たちの国で起きている悲劇的な出来事のために、深い悲しみ」を表したとツイートしたのに対し、ゼレンスキー大統領も、「教皇がウクライナの平和と停戦のために祈ってくれたことに感謝した。ウクライナ国民は教皇の精神的支えを感じている」とツイートした。
世俗法と宗教法がウクライナを巡り、せめぎ合っている。