バチカンと日本の文化交流の歴史を包括的に解き明かしていくことを目指して立ち上げた「バチカンと日本 100年プロジェクト」は、昨年9月からクラウドファンディングを介し、過去の歴史をひも解くだけでなく、その成果を分かち合い、後世に残し、発展させていくために、「文化交流パートナー」としての参画と支援を呼び掛けている。
このクラウドファンディングの応援プログラムとして1月14日、プロジェクトのアンバサダーに就任した加藤一二三氏(将棋棋士・九段、仙台白百合女子大学客員教授)による特別講演会(角川文化振興財団主催、朝日新聞社共催)が朝日新聞東京本社(東京都中央区)から生配信された。「バチカンと将棋を語る――より良い人生を歩むために」と題して語った加藤氏は、バチカンで教皇と接見した際の思い出や、30歳で洗礼を受けてから、カトリック信徒として勝負の世界にどう臨んできたかなどについて語った。
同氏の信仰については一昨年に上梓された『だから私は、神を信じる』(日本キリスト教団出版局)に詳しいが、77歳で現役を引退する直前、「キリスト教を伝える使命がある」と励まされていると確信したとの逸話を披露。「将棋に勝たせてほしい」とは祈らない理由について、「勝たせてほしいと祈るとプレッシャーになって力が出ない。『力を尽くして戦わせてください』と祈ると勝てることが多い。将棋に限らず、仕事というのは時間の使い方が重要」と話した。
また、「もし洗礼を受けていなかったら?」との問いには、「40歳ぐらいで行き詰まって60歳で引退していただろう」と答え、キリスト教の信仰が棋士人生に与えた影響の大きさをうかがわせた。最後に信者以外の聴衆に向け、同プロジェクトを通じて「バチカンに親しみを持ってほしい。人生に有益な知恵や格言、戒めが詰め込まれた聖書もぜひ読んでほしい」と勧めた。
クラウドファンディングの詳細はこちらから。プロジェクト事務局は受付期間を2月22日(火)まで延長し、さらなる支援を呼びかけている。