キリスト教や仏教など宗派の違いを超えた宗教者255人が、使用済み核燃料サイクル施設(青森県六ケ所村)の運転差し止めを求めた「宗教者核燃サイクル事業の廃止を求める裁判」(略称=宗教者核燃裁判)で10月7日、原告による意見陳述が行われた。
この日、東京地方裁判所の法廷に立ったのは日本聖公会名古屋聖ステパノ教会信徒の池住義憲氏=写真左端。同氏は原告に加わった経緯として、2015年、ドイツの脱原発倫理委員会メンバーであるミランダ・シュラーズ氏を訪ねた際に「脱原発にかじを切るコストは未来への投資」との話を聞き確信を得たこと、自分たちだけの公正・正義でなく、他の地域・社会・国の公正・正義を含む「公正にもとづいた平和」を意味する「ジャストピース」(Justpeace)という概念について紹介し、次の世代や途上国の安全を犠牲にして成り立つ平和や繁栄は「ジャストピース」に反すると主張した。
この裁判は、原告に加わった宗教者が、人類の歴史において築き上げられた叡智を過去から受け継ぎ、未来に生きる人々に受け渡すという責務を果たすため、「核がもたらした悲劇を繰り返してはならない」「次世代に核のゴミを押し付けるわけにはいかない」と決意し、人格権に基づき、再処理工場の運転差し止めを求めたもの。
記者会見後の報告会では、信仰を持つ原告らの「命をつなぐ権利」が侵害されていると訴える裁判の意義について説明され、宗教詩人として知られる坂村真民の詩「あとからくる者のために」の一節「あとからあとから続いてくる/あの可愛い者たちのために/未来を受け継ぐ者たちのために/みな夫々自分で出来る何かをしてゆくのだ」も共有された。
原告団共同代表の中嶌哲演氏(真言宗明通寺住職)は、同じく共同代表として意見陳述を行った岩田雅一氏(日本基督教団八戸北伝道所牧師)が今年7月に亡くなったことを受け、「片方の翼をもがれたような心境だったが、今回の口頭弁論を聞いて励まされた」と打ち明けた。