「映画から読み取る黒人たちの叫び――ゴスペル」をテーマに、スティーブ・マックイーン監督による映画『それでも夜は明ける』について語り合う第1回「ZOOM映画カフェ」が5月9日、オンラインで行われ、配給会社のスタッフを含め50人以上が参加した。5月末公開の映画『アメイジンググレイス/アレサ・フランクリン』のプロモーションの一環として企画されたもの。同作は、「ソウルの女王」として知られるアレサ・フランクリンが1972年にロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会で行ったライブを収録したドキュメンタリー映画。
4月に音声SNSクラブハウスで行われた同作についてのトークイベントが好評であったため、その続編として企画され、今回はゴスペルの歴史的背景となる奴隷制度による苦悩や黒人霊歌時代の生活について、赤裸々に描き出した映画『それでも夜は明ける』にスポットが当てられた。
「聖書で読み解く映画カフェ」代表の小川政弘氏(元ワーナー・ブラザース映画製作室長)、ゴスペルシンガーの塩谷達也・美和夫妻、単立ビサイドチャーチ東京牧師の波多康氏によるパネルディスカッションでは、塩谷夫妻の体験と知識を中心に、重層的な議論が展開された。ディスカッションの模様は下記URLから音声で聞くことができる(https://bit.ly/3uLJve8)。
司会を担った青木保憲氏(グレース宣教会牧師、同志社大学嘱託講師)=写真上=は、「赤裸々な拷問描写や胸を締め付けられるような物語展開に、『こんなことが昔あったなんて……』と二の句を告げない方が多かった。この虚しさとやるせなさが、民族としての『アフリカ系アメリカ人(黒人)』の生活文化習慣の中に沁みついていることから、私たちは目を背けてはならない」とコメント。
ディスカッションの中盤で出された「同じ聖書を使っているのに、白人の農場主たちが聖句を読むシーンでは虚しさを感じた」との発言を受け、「表面的な『愛』、言葉だけの『知恵』を白々しく、そして朗々と読み上げる白人農場主たち。彼らの所業はどこまでも私たちの胸をえぐり、そこに聖書が用いられたということにWASP(アングロ・サクソン系プロテスタントの白人)とは異なる人種として、大いに失望させられたということであろう」と振り返った。
小川氏の解説によると、本作のプロデューサーであるブラッド・ピットは「PLAN-B」というプロダクションを立ち上げることで、今必要とされる映画、語られるべきメッセージを映像化しているという。また本作がアカデミー賞で作品賞と脚色賞、さらに助演女優賞を獲得していることにも触れ、映画の要諦となる部分で確固たる評価を受けた「名作」である、と結んだ。
今回の開催に尽力したビサイド・ミニストリーズスタッフの礒川道夫氏によると、今後も定期的に同様のオンラインイベントを計画中だという。