コロナ禍で緊縮に迫い込まれるバチカン財政

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欧州各国が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で悪化した経済を立て直すために財政支出を増やす中で、バチカン(ローマ教皇庁)は観光客や寄付が激減、痛みを伴う緊縮財政に追い込まれている。英経済専門メディア『フィナンシャル・タイムズ』(FT)が紹介した。

教皇フランシスコは「新型コロナウイルス感染症がもたらした公衆衛生上の緊急事態がバチカンのあらゆる収入源に悪影響を及ぼしている」として、4月から全枢機卿の給与を10%引き下げると発表した。教皇は給与を受け取っておらず、対象にならない。

国際通貨基金(IMF)は、パンデミックが経済に及ぼす悪影響を緩和するため、ユーロ圏諸国に国内総生産(GDP)比3%相当の政府支出積み増しを求めた。

バチカン財政の責任者フアン・アントニオ・ゲレーロ・アルベス財務事務局長官は、2021年の支出は「近年のバチカンの歴史で最少規模になる」と話す。他の欧州各国が大規模な財政出動を行っているのと対照的だ。同氏は、バチカン財政の規模が極めて小さく税収もないため、他国のような対策は取れないと認めた。「普通の国であれば借金を増やして財政出動できるだろう」と同氏。「我々の場合、寄付金が入ってこなければ、支出をできる限り抑制する以外にできるのは準備金を使うことだけだ」という。

バチカンを訪れる旅行者の数の目安となるイタリアの観光客数は、過去の不況には強かったが、パンデミックでは大打撃を受けている。バチカンでも主要な美術館や展覧会が昨年はほとんど閉鎖続きで、重要な収入源が失われた。カトリック教徒からの寄付金も減っている。世界で不動産や商業活動からの収入も減っており、寄付金を除くと、今年の赤字は8000万ユーロ(約100億円)に増えるという。赤字は準備金で補填(ほてん)される見通し。

バチカンは宗教行事開催費用をまかなうため外部からの寄付に期待している。昨年、教育関係の慈善事業担当に任命されたアンジェロ・ビンチェンツォ・ツァーニカトリック教育省次官は、「バチカンにはほとんど何もない。外部からの支援を模索している」と認めた。(CJC)

Photo by Raimond Klavins on Unsplash

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