マスク着用、3密回避で聖餐は可能 専門的知見から提言 堀成美さん(感染症対策コンサルタント) 日本聖書神学校 「感染症と教会」テーマに修養会 2020年11月11日

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 クリスマスを1カ後に控え、今年の祝会、食事会、聖餐式をどうすべきか検討中の教会も多いことだろう。新型コロナウイルスによる感染症の影響が長期化する中、すでに対面での礼拝を再開した教会でも「飲食を伴う」教会行事については見送るケースを多く見受ける。何が正解か分からないまま、根拠もなく続けてしまった対策の効果と実用性を改めて見直す必要性もありそうだ。

10月末に行われた日本聖書神学校(東京都新宿区)の全校修養会は「感染症と教会」をテーマとし、特に「感染症予防に配慮した聖餐の守り方」と題する分科会も開かれていた。アドバイザーとして参加したのは、同校在学中の堀成美さん(3年)。感染症対策の専門家として数々の現場を経験してきたが、神学校で学びを始めたタイミングで、まさかこのような事態になるとは想像もしていなかった。

同校で実践神学を教える荒瀬牧彦さん(カンバーランド長老キリスト教会牧師)の司会で進められた分科会では、コロナ禍における聖餐式をめぐってのさまざまな見解、手法の違いが紹介された後、配餐の準備から片付けに至る全行程について順を追いながら、どのような対策が有効かについて堀さんが解説した。

堀さんによれば、これまでに蓄積された臨床データを分析すると、症例の9割は飛沫感染で、体が触れただけで伝染するという直接感染の事例はほとんど見られないという。

「多くの場合、マスクをせずに至近距離で会話をするなどの状況で感染している。ほとんど声を発しない礼拝の中で、マスクさえしていれば聖餐式から感染する可能性は想定しにくい。他人が直接触れることに抵抗があるなら、パンや杯を置く間隔をある程度空けて各自が取るようにすれば問題ない」

多くのプロテスタント教会では、すでに切り分けられたパンを担当者が配餐する手法が多いため、「飲食だから」との理由だけで中止する必要はないという。どんなに人の手に触れようとも、事前事後の手指消毒で「リセット」することが肝心。特に目、鼻、口内の粘膜から感染するのであって、顔に触れた時点で感染するわけではない。

また、礼拝後の食事についても、大皿で取り分けるのではなく、個別に弁当などを食べる分には、ある程度距離を取って、向かい合わないよう座席の工夫さえすれば可能だと堀さんは考えている。礼拝中の賛美歌についても、マスクをして飛沫が不用意に拡散しない限り、通常通りの歌い方でも感染リスクは低いという。

ただ、医学的、科学的根拠だけでなく、心理的な不安をどう取り除くかについても配慮が必要とも指摘。たとえ感染しないと頭では分かっていても、目に見える形で不安が払しょくできないということも十分あり得る。それらを考慮した上で、建物の構造や出席者数をふまえた冷静な判断が求められそうだ。

正しく恐れる必要「9割は飛沫感染」
ルール見直し、負担の少ない対策に

 

分科会では、一部の教会で実践され始めた「オンライン聖餐」の是非をめぐっても議論。参加した神学生らは、自身の通う教会での感染対策を振り返りながら、さまざまな事態を想定した質問や意見を熱心に交わし合った。

コロナ禍で礼拝が中止に追い込まれていった当初、礼拝のあり方や聖餐式をめぐって、ほとんど議論がされなかったことに危惧を覚えたという荒瀬さんは、「プロテスタント教会にとっての聖餐式は、そんなに簡単に止めていいものだったのか。これを機に再度考える必要がある。歌詞の意味も考えず、賛美歌を省略して歌うような事例も見られたのは残念」と問題提起した。

堀さんは教会内外のさまざまな感染対策を見聞きする中で、4、5月の感染拡大当初、慌ててルール化してしまったことを見直し、効果があって負担の少ない対策に移行していくべきと助言する。エレベーターに乗る人数を制限することで無用な混雑を招いたり、共用パソコンの使用を禁じたり、玄関で靴や衣類を消毒したりなど、根拠のない「謎対策」で余計な負荷がかかり、不都合が生じている場合も少なくないようだ。

この秋には、新型コロナをはじめインフルエンザや食中毒などから正しく身を守り、安心して暮らす方法を専門家の立場からQ&A方式で解説した新刊『今日からできる!暮らしの感染対策バイブル』(主婦の友社)も上梓した。同書は女性1千人からアンケートを募り、生活で感じる不安や心配ごと160項目以上に一問一答形式で答えたガイドブック。教会でも、感染リスクを正しく恐れ、安全なクリスマスを迎えるために参照してみてほしい。

ほり・なるみ 感染症対策コンサルタント。看護師・感染症実地疫学専門家。東京都看護協会新型コロナ対策プロジェクト会議アドバイザー。国立国際医療研究センター客員研究員。東京都港区感染症専門アドバイザー。神奈川大学法学部、東京女子医科大学看護短期大学卒業。病院勤務を経て、国立感染症研究所感染症実地疫学専門家養成コース、国立保健医療科学院健康危機管理専攻修了。聖路加国際大学助教(感染症看護・看護教育学)、国立国際医療研究センター研究員などを歴任。東京学芸大学大学院 修了(教育学修士)。現在、日本聖書神学校に在学中。

【堀さんを招いた「教会のウイルス対策」オンライン相談会を開催】

教会関係者の方を対象とするオンライン相談会を開催します。クリスマスに向けて、各教会で行っているウイルス対策が有効か否か、祝会や聖餐式はいつ、どのような形で再開できるのかなど、さまざまなお悩みに直接、堀さんが答えてくださいます。

・日時:11月28日(土)19:00~21:00 *途中参加・途中退室も可
・Zoomミーティング形式で開催
・参加費:1,000円
・定員:100名
・申込:参加ご希望の方は以下、Peatixサイト(http://ptix.at/VbXtD5)からお支払い、手続きをお願いいたします。
申し込まれた方には追ってZoomのログイン情報をご案内いたします。

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