日本文化の深層や日本人の心の深みを浮き彫りに
〈評者〉木村庸五
改題改訂増補新版「日本教」の極点 母子の情愛と日本人
西谷幸介著
新書判・240頁・定価1430円・ヨベル
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評者は以前本書初版の書評をしたことがある(季刊誌『教会』一二二号)。このたび、本書は改題され(旧題は「母子の情愛─日本教の極点」)、さらに補遺として「不当な連れ去りか母子の情愛の帰結か─日本人母親によるアメリカからの子どもの連れ帰り」の項を加え、改題改訂第二版として刊行された。改訂再版が出るほどに日本人論への関心は依然として続いていると思われる。
この補遺は、ここ数十年間の三百五十件ほどのアメリカ人父親と日本人母親の離婚に際し、そのほぼすべての事例で日本人母親が子どもを日本に連れ帰った、という日本人母親独自の顕著な現象に注目している。こうした場合、一般には、子を連れ去る父・母の割合は二対一であるにも拘わらずである(本書二一三頁)。そして、著者は、この現象が日本文化の内包する母性原理、「母子の情愛」に由来することを指摘して、その「日本教」の解明・探求のさらなる前進を示した。