袴田康裕著 ウェストミンスター信仰告白講解 下巻(坂井純人)【本のひろば.com】

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評者: 坂井純人

改革派・ピューリタン的信仰の歴史的意義の解明と集大成
〈評者〉坂井純人


ウェストミンスター信仰告白講解 下巻
袴田康裕著
A5判・396頁・定価5280円・一麦出版社
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ウェストミンスター信仰告白講解(上巻)に続き、下巻が刊行された。本書は上巻に続き、宗教改革の重要な主題である救済論と教会論、終末論の領域における御言葉の解明に光を照らす、ウ告白の後半部分の講解である。本書は、著者の長年の研究成果を踏まえた重厚な考察により、ウ信条全体を生み出したピューリタン的・改革派信仰の精髄を歴史的背景の分析とともに、その信仰内容を網羅的に解説している。
構成は、ウ告白の救済論における神の恵みへの応答としての、第16章「良き業」論に始まり、教会論を経て、第33章の「終末論」に至る主題の解明である。
本書の特色と価値は、まず、第一に、読者に対する丁寧で配慮に満ちた構成にある。具体的には、厳密な本文研究を土台に、同時代の改革派諸信条との関連個所が付記され、各種の翻訳と、訳文の検証結果を〈註〉で示し、さらに、〈解説〉で、教理的、信仰的内容が解説されている。第二に、本書は、宗教改革の意義を存分に考えさせる教理史的背景の解明に有益である。特に、教理史的背景としての、対ローマ・カトリック、プロテスタント陣営での対ルター派(良き業、聖餐論におけるキリストの臨在理解等)との異同、また、教会論では、教会と国家との関係をめぐって、再洗礼派やエラストス主義者との違い、国家に対する教会の霊的自律性を主張するウ告白の立場の解説等は、改革派、長老主義教会の形成過程と存立意義を理解する上で、重要である。

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