久野牧 著 神の子イエス・キリストの福音(吉田隆)【本のひろば.com】

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評者: 吉田隆

“主イエスと出会う”説教集
〈評者〉吉田 隆


神の子イエス・キリストの福音
主イエスと出会うマルコ福音書講解

久野 牧 著
A5変型判・302頁・3080円・一麦出版社

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二〇二〇年の年明けに始まったコロナ渦以来、日本の教会は、依然大きな混乱と停滞(あるいは後退)を余儀なくされているように思われます。それに追い討ちを駆けるように、旧統一教会問題が浮上しました。・宗教は危険だ・というオウム真理教事件以来の刷り込みがさらに強化されるかのように。
本書の著者は、この問題を政治と宗教の問題として論じることもさることながら、何よりも教会の宣教の課題として考えるべきではないかと「あとがき」で論じておられます。「つまり、イエス・キリストを唯一の救い主として宣教する教会の姿勢の弱さや不徹底ぶりが、こうした偽メシアをわたしたちの社会にはびこらせる要因の一つとなってはいないかということです。」「偽物を退けることは、本物によってしかできません。それは神のひとり子イエス・キリストを真の救い主としてさし示すこと以外ではあり得ません」(二九七、二九八頁)と。そして、この教会の責任の自覚と福音宣教への情熱こそが、本書を貫く・心・なのです。
紹介の順序が逆になりましたが、著者の久野先生は、日本キリスト教会の大会議長を務められた方ですが、何よりも牧師として九州・四国・北海道と大小いくつもの教会を牧され、八〇を超えた今でも様々な形で教会の宣教の現場に関わっておられる生涯一牧師、生涯一伝道者であられる方です。とりわけ本書は、コロナ渦の二年間、教会に来ることのできない欠席者や高齢者に届けられた「説教梗概」が元になっており、短い文章(聖書本文を除いて二頁)の中に円熟した説教者の手腕が遺憾なく発揮されています。(つづく)

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