祈りの泉
〈評者〉柴田三吉
詩華集
聖書における光と影
日本キリスト教詩人会編
B6判・160頁・定価1980円・教文館
病を得た人、苦境に陥った人に、見舞いや励ましの言葉を送るとき、文末に「……を祈っております」という言葉をたびたび使います。常套句ではなく、心からそう願ってのことですが、こう書くたび私は、いったい誰に向かって祈っているのだろうという思いを抱きます。私は信仰の門の外に立つ者なので、神仏に向けてではありません。けれど祈りの気持ちは迷いなく湧いてきます。人は誰でも自分を超えた何かを心の内に持つのでしょう。その祈りこそは、人が人である証として心の奥深くから湧き出る、最も美しい泉であるように思います。
本書は前半を旧約聖書、後半を新約聖書における光と影とし、一六名の詩人(中山直子・内藤俊宏・古田嘉彦・木村淳子・東延江・中村不二夫・岡野絵里子・樋口忠夫・井上英明・柴崎聰・斎藤菜穂子・時澤博・佐野亜里亜・川中子義勝・坂井信夫・新延拳)が前後の章に作品を書き、後半には大鹿理恵氏が加わり、三三篇の構成となっています。