第10回世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)が20日〜23日にかけて、ドイツ南部リンダウ、ボーデン湖のほとりにある国際会議場「インゼルハレ」で開催された。ドイツでの世界大会開催は初めて。
13年にオースリア・ウィーンで開催されて以来6年ぶりとなる今大会では、125カ国から1000人を超える宗教者が集まった。日本からは、WCRP/RfP日本委員会の庭野日鑛(にわの・にちこう)会長(立正佼成会会長)や植松誠(うえまつ・まこと)理事長(日本聖公会首座主教)をはじめ40人が参加した。
大会のテーマは「悲しみの実践:共通の未来のために──つながりあういのち」。
開会式では、開催国であるドイツのフランク・ヴァルター・シュタインマイアー大統領が次のように緊急アピールを述べた。「宗教は平和のための道具です。そして、そうあらねばなりません。宗教がこれ以上、憎悪や暴力の正当化の原因とされてはなりません。いかなる戦争も宗教の名のもとに行われてはならないのです」
子どもたちによる諸宗教の祈りの後、コンスタンティノープル総主教ヴァルソロメオス1世をはじめ宗教指導者が、それぞれの信仰に基づいて、共に献身することへの誓いを呼びかけた。
分科会ではテーマごとに議論を深め、宗教別会合も持ちながら、全体会議で「つながりあういのち」を共通テーマに、最終日まで連日話し合われた。
大会2日目には、ナイジェリアのアブジャ教区大司教のジョン・オナイエケン枢機卿らが、ナイジェリアでの民族的・宗教的な緊張関係を緩和させるため、宗教者が推進している活動について報告した。その結果として、ボコ・ハラムによる拘束下にあるチボクの女子学生の解放という成果をもたらしたという。
また、7・5メートルの木製彫刻「リング・フォー・ピース(平和のための輪)」が発表され、ルイトイトポルト公園に設置された。この彫刻は、世界中から集められたさまざまな木材で構成され、連続性の象徴である「メビウスの環」を形作って、宗教間平和の永久的象徴を表している。
23日には、初めて女性の事務総長にアッザ・カラム氏(50)が選出された。94年から25年間、事務総長を務めたウィリアム・ベンドレイ氏の後を継ぐ。
カラム氏はエジプト・カイロ出身のオランダ人科学者で、アムステルダム自由大学で宗教・開発の教授を務め、国連人口基金(UNFPA)に上級アドバイザーとして勤務している。また、国連宗教・開発タスクフォース・コーディネーターとして、世界の600以上の宗教組織と共にグローバル諸宗教ネットワークを取りまとめるなど、90年代から数々の国際組織で能力を発揮してきた。
80人のWCRP/RfP国際評議委員も新たに選ばれ、名誉会長には、「世界宗教・市民団体平和対話財団」の議長を務めるウォルフガング・シューラー氏が選出された。
閉会式では、今後への決意と今大会の成果である宣言文が採択された。その中で、今後も継続して平和教育を推進していくことを取り決め、子どもから大人まで和解のスキルを身につける重要性を確認した。
また、アマゾン川流域の熱帯雨林で発生している火災に注目が集まり、各宗教の代表者たちは、いのちの源である自然に目を向け、環境保護に尽力することを宣言した。
世界宗教者平和会議は、諸宗教間の対話と相互理解から生まれる英知を結集し、平和のための宗教協力を行うことを目的に1970年に設立された非政府組織(NGO)。略称はWCRP(World Religions for Peace)、RfP(Religions for Peace)。第1回世界大会は「進歩と調和」をテーマに、1970年に京都で開催された。以後、74年にベルギー、79年に米国、84年にケニア、89年にオーストラリア、94年にイタリア、99年にヨルダン、2006年に再び京都、13年にオーストリアで開かれてきた。