詩人と聖書の関係を解き明かす一冊
〈評者〉時澤 博
詩人は聖書をどのように表現したか
柴崎 聰著
四六判・286頁・定価2310円・新教出版社
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本書は、著者が五十年以上前に初めて聖書に触れた時から生じた問題意識を元に、聖書と詩人の関わりを考察している秀でた評論である。その経緯を詩人である著者自身が「はじめに」(3−4頁)と「あとがき」(277−278頁)で、明らかに示してくれている。
近代詩を開拓した先駆者としての島崎藤村に始まり、牧師詩人として活躍した森田進に至るまで、十六人もの厖大な詩人と詩作品を取り上げ、精緻で透徹な分析を試みている。例えれば、僕らは橋の袂から下を覗き、川の潺が語りかける心地良い響きを耳にするようであり、鳥の地図(あるとしたら)を手に大空を飛翔しながら、次々と眼下に拡がる世界を、驚きつつ俯瞰している感覚でもある。
装幀はFrank Andreeの写真が、モノトーンの精錬されたデザインで配置されており、本書の内実に相応しい装いを纏っている。