毎年のシュトーレン。いつもと違うアドヴェント。

8月に教会のクリスマス委員会が立ち上がるころ。
リンゴとドライフルーツをラム酒に漬けるところからシュトーレン作りは始まります。

最近はパン屋さんでも見かけるようになったシュトーレン。
アドヴェントに入ったあと、毎日少しずつスライスしていただきます。

シュトーレンは室温に置いている間に熟成されて更においしく変化していきます。
クリスマスを心待ちに日々を過ごすアドヴェントにぴったりのパンです。

実際にシュトーレンを焼く準備に入るのは11月末。
例年だと、同時進行で庭や牧師館の針葉樹やホーリーを切り出し、アドヴェントに備えて教会玄関のリースを準備するのですが、今年は教会の人たちと一緒に作業することが出来ず、自宅で作業することになりました。

ちょっと寂しいけれど、これも感染対策を優先させるため。
今年のアドヴェントはいつもと違うことがたくさんあります。

シュトーレンは真っ白な産着に包まれた幼子イエスをイメージして作られたドイツ発祥の発酵菓子です。

酵母の入った生地にたっぷりのバターとリンゴ、レーズン、自家製夏みかんピール、アプリコットやドライベリー、ドライイチジク、ナッツを加え、発酵には丸一日をかけます。

私は自家製酵母を育てています。フルーツの表面に住まわせた酵母は、必要な水分、糖分、温度条件を整えれば放っていくだけで増えていきます。
長年育てる中で酵母の性格も分かり、発酵にどれだけ時間が必要かも分かるようになりました。

不思議なことに、冷蔵庫で暮らす酵母が元気になるタイミングは、庭にいるミミズが活発になるタイミングと同じなんです。
生き物の体内スイッチは不思議だなぁ、と思わされています。

酵母の世界は本当に不思議で深いです。
酵母は「生まれ」や「育ち」、そして「用いられ方」で性格が変わっていきます。
生き物なので、手をかけすぎもダメだし、放置しすぎもダメ。

大事なのは何度も試して、ベストな発酵の見極めを自分の感覚で掴むこと。
酵母を扱っていると、「目に見えないけど、そこに確実に有る」という、聖書の世界が現実に感じられます。

発酵が済んだら焼き上げ、表面にバターを塗り、粉砂糖をたっぷりまぶして乾燥しないようラッピングします。

アドヴェントに入り、熟成が進むシュトーレンを薄くスライスして味わいながら、日に日にクリスマスが近づいて来るのを楽しむー。
そうしていくうちに、クリスマスを迎える心の準備が整えられていく日々を過ごしています。

リース作りで余った葉や枝をシュトーレンに添えたら、親しい人に贈るクリスマスプレゼントの出来上がり。

ありふれた日常はいつ戻ってくるんだろう、という慣れない感覚を持ちつつ、今年はゆっくり家族で過ごすクリスマスを楽しもうと思います。

皆さんも、素敵なクリスマスを過ごされますように。

伊藤佳代

伊藤佳代

いとう・かよ 栄養士、一児の母。お菓子作りの腕は教会(バプテスト派)の愛さん会やバザーなどの奉仕で鍛えられる。器好きが高じて、絵付け教室を主催。日々のご飯をinstagramで発信中。

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