全国から寄贈1500冊以上、安曇野聖書図書館がオープン 聖書を読みたい気持ちになる場所

北アルプスのふもと安曇野に、キリスト教に関する本や資料を取りそろえた「安曇野聖書図書館」が8月24日、「豊かな聖書書店」の2階にオープンした。約50平方メートルの館内には、1500冊以上もの本が並ぶ。館長を務める日本ウィクリフ聖書翻訳協会宣教師の鳥羽季義(とば・すえよし)さんに話を聞いた。

鳥羽季義さん

鳥羽さんは、1938年生まれ。66年に「日本聖書翻訳協力会」を結成後、米国への留学やSIL(少数民族の言語研究を行う宣教団体)会員としてメキシコでの訓練をとおし翻訳を学ぶ。帰国後は、日本ウィクリフ聖書翻訳協会に入会し、70年に同協会の宣教師としてネパールに派遣され、少数民族のカリン族のため旧新約聖書全巻の翻訳に尽力。2019年には日本キリスト教文化協会より、キリスト教功労者として顕彰された。

──安曇野聖書図書館(以下、図書館)を作られたきっかけを教えてください。

私は、長野県出身で、こちらで洗礼を受け、東京の大学に入るために上京しました。外国での宣教奉仕を終えて、故郷に戻ってきたのですが、長野の中部地方にある一般の図書館をまわって調べたところ、キリスト教関係の本が非常に少ないことに気づきました。また、聖書関係の本を買う余裕がない牧師さんがいるということを知り、それならばと、日本全国に声をかけて、眠っている本を寄付していただき、ここに分類して利用してもらおうと思ったのです。

──どのくらいの本が集まったのでしょうか。

1500冊以上です。さまざまな言語で記された聖書や註解書、アウグスティヌスやカルヴァンなどの神学書、文学作品では、パスカルの『パンセ』、ダンテの『神曲』、ミルトンの『失楽園』といった古典だけでなく、三浦綾子先生など近現代のクリスチャン作家の小説もあります。その他にも内村鑑三や新渡戸稲造の全集、戦国時代の宣教師ルイス・フロイスの著書、さらに、個別の教会の記念誌など、欲張りなくらいにキリスト教に関するあらゆる本を集めました。

キリスト教書籍が並ぶ館内。(写真提供:安曇野聖書図書館)

──分類にはどのくらいかかったのでしょうか。 

1階の書店で店主をされている吉野(冨貴子)さんと、3年ほどかけて分類しました。神学、説教学、牧会学、個々の教会の歴史というように分類しています。

──こちらで本を読むこともできるのでしょうか。

館内はそんなに大きくはありませんが、本が読めるように机と椅子を置いています。単に本が並んでいるだけでなく、聖書時代の地図や写真、私がイスラエルに行ったときに手に入れた品々、500年前の宗教改革の貴重な資料なども展示し、視覚的にも聖書の世界を体験できます。ビデオなども用意しています。

書籍だけでなく聖書に関連する資料も。(写真提供:安曇野聖書図書館)

──鳥羽先生は、1970年に宣教師としてヒマラヤのふもとにあるカリン村に入ったとお聞きしました。安曇野も北アルプスのふもとということでイメージが重なります。

同じふもとと言っても、ヒマラヤは日本アルプスの倍以上の高さですし、カリン村に入るには3000メートル級の峠を越えなければならないとても厳しい場所です。私は山が好きで、何度も日本アルプスには登っているので、山自体はそんなに苦ではなかったのですが、あんな奥地に人々が住んでいることが驚きでした。文化的にも、言語的にも全く違う世界でしたが、貧しいながらもちゃんと生活し、何千年という歴史があって、そのことが口伝えで残っていました。

──そのような中での聖書の翻訳作業は想像がつきません。

聖書の話をしていたら、それをぜひ読みたいから訳してくれと村から頼まれたのです。それが動機となって、難しい言語でしたがカリン語を必死に学びました。文法も辞書も何もない、口だけで喋っていたものを書き留め、文字化し、カリン語の聖書を作りました。その一方で、読み書きを教えたり、医療の仕事をしたり、最後には、旧約聖書全巻を訳しているときに集めた単語を分析して辞書を完成させました。

日本には、文字があり、たくさんの読み物はあるけれども、本当に読みたいものがあるでしょうか。聖書を知らない人が安曇野に大勢いるので、今はその人たちに聖書を読んでほしいと思っているところです。

──今回オープンした図書館は、その願いも込められているのでしょうか。

市の図書館に聖書を寄贈することはできますが、聖書を読みたい気持ちになる場所が必要だと思っています。今、教会は信者が減って大変な状況ですが、はじめに紹介した牧師さんをはじめみなさん熱心に聖書の真理を教えていらっしゃいます。そういう牧師さんにも役立ててもらいたいし、勉強をしたいと思っている一般のクリスチャンの方にも用いていただきたい。蔵書も図書目録を見るとまだ足りないと思っています。今後さらに増やしていきたいと考えています。

書店の営業時間(月~土曜午前10時~午後6時、祝日午後1~4時、日曜休み)に合わせて開館。貸し出し期間は約1カ月(一部不可の書籍も)。問い合わせは(電話・ファックス:0263・73・5744、メール:abundantlifebbs@yahoo.co.jp)。寄贈も受け付け中。

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