【インタビュー】本郷台キリスト教会牧師、池田恵賜さん スポーツと若者と教会と(前編)

 

日本福音キリスト教会連合(JECA)・本郷台キリスト教会の主任牧師、池田恵賜(いけだ・けいし)さんに、スポーツ伝道について話を聞いた。池田さんは、日本国際スポーツ・パートナーシップ(JiSP=Japan International Sports Partnership)の発足に関わるなど、日本でいち早くスポーツ・ミニストリーの重要性に着目し、さまざまな活動を行っている。

池田恵賜さん

本郷台キリスト教会は、私の父(池田博さん)が1969年から牧師を務めてきた教会でした。そこに私がユース・パスターとして入った96年、中高生の男子が一人もいなくなったのです。そこで、「若者たちが喜んで集える教会になりたい」と、スタッフと一緒に神様の前で祈り始めたのが、スポーツ伝道に関わるきっかけでした。

日本では、活発な子ほど、早い時期に教会を離れてしまう傾向があります。その背景には、「信仰か、部活か」と選択を迫る教会のあり方に課題があるのではないでしょうか。

スポーツが好きな子はクラブ・チームに入りたいし、活躍したいという思いがあります。でも、土日はほぼ練習や試合があるから、教会には行かれない。一方、日曜日の午前中にやっている礼拝に参加しなければクリスチャンとして失格だと教会が見なすような風潮があります。

大人でも「信仰か仕事か、どちらかを選べ」と言われたら、難しいことがありますよね。それを子どもたちに迫るのはどうなんだろう。「信仰」という名のもとに、部活をやりたい子たちを教会に来られなくしてしまっているのではないか。私は祈りながら、漠然とそんなことを思っていました。

大きな転機となったのは、2002年FIFAワールドカップ日韓大会です。私たちの教会がある横浜市は決勝戦の会場でもあることから、「この機会に福音を伝えられないか」ということで、GOAL2002の伝道会議に呼ばれたんですね。

それまでは「スポーツ伝道」というと、競技場前で聖書やトラクトを配るようなイメージしかなく、効果的な働きはできないのではないかと思っていました。でも、そこで聞いた韓国の宣教師の証しが私を変えていったのです。

その大会は、もともと日本単独で開催される見方が有力だったのですが、結局、韓国との共同開催になりました。私個人としては、「日本10都市分の試合を韓国に持って行かれた」という気持ちでいたところ、その宣教師は「共同開催になったというニュースを聞いて、泣きながら神様に感謝の祈りをささげた」と言ったんです。さらに、こう続けました。

「20世紀は戦争の世紀だったので、21世紀こそ誰もが平和を望んでいたはずです。しかし、2001年の9・11テロで、また新しい世紀も戦争から始めてしまいました。

ところでこのW杯は、21世紀最初に行われる国際的なスポーツ大会であり、発信力もあります。だからこそ、かつて憎しみ合っていた国同士が一つになって『平和の祭典』を行うことができると世界にアピールできる。そう考えて、日韓共同開催になるよう祈っていました。

このW杯を共に盛り上げていきましょう。本当の意味で世界に平和を示せるのは、神様から平和をいただいた私たちクリスチャンではないでしょうか」

日本を恨んでいると思っていた韓国の先生から「一緒にやろう」と手を差し伸べられるなんて思ってもみなかったので、私はその手を握り返さずにはいられませんでした。

2019年に行われたフェスティバルで

その年、いくつかの教会が中心になり、市内のサッカー場を借りて「サッカー・フェスティバル」を行いました。2日間、サッカーのトーナメントやトランポリン、フリーマーケット、ゴスペル・コンサートなどを用意した結果、およそ3000人の方が来てくださり、成功を収めました。会場では、ピエロに扮した宣教師が聖書やトラクトを配ったりもしました。

そのイベントの最後に、神様はこんな光景を見せてくださったのです。それは、教会に通っている一人の男の子がお母さんのもとへ駆け寄り、「友だちが聖書をもらってくれたよ」とうれしそうに報告をする姿でした。彼は、学校で「自分はクリスチャンだ」と言えずにいる子でした。

それを見た時に私は、「そうか、スポーツ・ミニストリーは、あんなにシャイだった子を立派な伝道者に変えるんだ」と思ったのです。その時に初めて私はスポーツ・ミニストリーの可能性に気づきました。そして、「神様、このイベントを一発花火で終わらせてしまってはいけないような気がします。このあと私はどうしたらいいでしょうか。御心を示してください」と祈るようになりました。(後編に続く)

河西 みのり

河西 みのり

主にカレーを食べています。

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