牧会者「堀肇先生」記念感謝の集い、魂の配慮者をとおして示された恵みを分かち合う

今年5月28日に召天された堀肇(ほり・はじめ)氏を偲ぶ、「牧会者『堀肇先生』記念感謝の集い」(太平洋放送協会、お茶の水聖書学院、お茶の水クリスチャン・センター、牧会ステーション、いのちのことば社共催)が7月31日、お茶の水クリスチャン・センター8階チャペル(東京都千代田区)で開催された。教団教派を超えた人たちが会場に集まり、堀氏をとおして示された神の恵みを分かち合った。

記念感謝の集いは、葬儀に参列できなかった人たちからの強い要望で実現した。=7月31日、お茶の水クリスチャン・センター(東京都千代田区)

「記念感謝の集い」は、聖書の朗読(ヘブライ人への手紙13章7〜8節、同17節、同12章1節)と、この日司会を務めた大井満氏(お茶の水聖書学院 学院長)の祈りと、堀氏が愛聴していたヴァイオリンのCD「祈り」に収録されている「神の御子にますイエス」(新聖歌397)の演奏で始まった。

堀氏は、1985年に鶴瀬恵み教会(埼玉県富士見市)に赴任した頃から「心のケア」に従事するようになり、牧会カウンセラーとして多くの人の声に耳を傾けてきた。その一方で、大学や神学校などで教鞭を取り後進の育成に努め、またキリスト教諸団体では要職につき福音のために尽力してきた。それらの働きの中で共に仕事をし、親交を深めてきた各分野の9人が、「堀先生からいただいたもの」と題して短いスピーチを行った。

登壇したのは、お茶の水聖書学院元学院長の藤原導夫氏、太平洋放送協会(PBA)前常務理事のティモシー・E・セランダー氏、牧会ステーションの齋藤恵美氏、いのちのことば社「百万人の福音」編集長の宮田真実子氏、キリスト教カウンセリングセンター理事の吉岡光人氏、鶴瀬恵み教会協力牧師の石原由美子氏、日本ルーテル神学校デール・パストラル・センター所長の齋藤衛氏、聖学院大学教授の藤掛明氏(手紙代読)、日本伝道福音教団三条福音教会牧師の佐々木顕氏。堀氏の著書『心の部屋を空けて』の朗読(抜粋)と愛歌(愛唱賛美)「この世のなみかぜさわぎ」(讃美歌第二篇157)をはさみながら、それぞれが持つ堀氏との思い出を語り、感謝を伝えた。

坂野慧吉氏

同集会の発起人の一人で、長年にわたっての友人でもある坂野慧吉氏(浦和福音自由教会協力牧師)も登壇し、堀氏との交流を語った。心に残っている言葉として「家族の中に弱い存在がいて初めて家族は健康でいられる」をあげ、教会にも当てはまることだと話す。また、以前、身辺の人たちが毎週のように亡くなり、精神的に疲弊しヒステリックになっていた時に堀氏から「そのような経験をしたら誰でもそうなりますよ」と言われたことで、自分は普通なのだと分かり、心が平安になったことを明かした。

2人が最後に会ったのは今年5月。上野公園を散歩しながら映画や新聞記事の話などをする中で、堀氏が何よりも力強く語っていたのは日本の教会のことだったという。「日本のキリスト教会、それぞれの教団教派は大事だけれども、みんなで協力をして福音を伝えていかなければいけないのではないか」という言葉を遺言として受け止めていると述べた後、次のように語った。

ある時堀先生に何と呼ばれたいかと聞いたときに、牧会カウンセラーではなく「ゼールゾルガー(=魂の配慮者)」と呼ばれたいんだと言っておられた。自分も魂を配慮してもらった一人として、今日堀先生の話ができたことを感謝しています。

堀寛子氏(写真=中央)。

最後に、妻の堀寛子氏が、息女2人とともに挨拶に立った。牧師として福音とは何かを一生懸命追求し、講演・事業・執筆と忙しい中にあっても、神様と人を愛し喜びを持って歩んでいたことを話した上でこう加えた。「全てが順調ではなかったが、苦しみの時には祈って、神の時を待つという人だった。願いはキリストに似た者になることでした。」

一方、ユーモアでいつも家族を笑わせていたことも明かした。亡くなる少し前に、足を動かす体操を手伝っていた時のエピソードを披露し、「この時『ありがとう』とあんまり言うので、娘と一緒に大笑いしたのですが、今思えば、本当はあの時私の方が『ありがとう』と言わなければならなかったと思っています」と胸の内を語った。そして、次のように締め括った。

もう少し共にいたいと思いましたが、神さまが地上での生活はもう十分だよとおっしゃって天に召してくださった。私たちは気持ちをしっかり持って前に進んでいかなければと思っています。死はいつくるか分かりませんから、心を込めて一日一日を大事にしたいと思います。

記念集会では、堀氏からのメッセージもあった。一つは、生前事あるごとに堀氏が引用してきた「心豊かな旅を送るために」の朗読。もう一つは、2022年12月に「ライフ・ライン」で放映された「Holy Cafe〜紅茶でクリスマスを」の上映だ。堀氏は紅茶コーディネータの資格もあり、カウセリングに訪れる人たちに紅茶を振るまうことも多かったという。エプロン姿で紅茶を淹れる堀氏が映し出されると、会場は優しい笑い声に包まれた。

堀氏は、『心の部屋を空けて』をはじめ多くの著書を残しており、来月には月刊誌「百万人の福音」に昨年まで連載していたコラムをまとめた『心の窓を開いてーー五感、それは神の贈り物』(いのちのことば社・フォレストブックス)がこの日に合わせて発行され、会場でも展示販売した。単行本化にあたっては、亡くなる直前まで気にかけ、校正・加筆をしていたことを、連載から編集を担当してきた宮田氏が「堀先生からいただいたもの」の中で明かした。その中で、堀氏と最後に交わしたメールを紹介した。そこにはこう書かれていた。

心の平安の問題は日常的ですが、心の窓から入ってくるもの次第で日々の生活は変わってしまいます。明るくも暗くもなりますね。

この記事もおすすめ