【書評】 『我が国籍は天に在り』 舩戸良隆

キリスト教書書評まとめ読み:本のひろば.com

胸を打つ伝道者の〝志〟
〈評者〉小友聡

我が国籍は天に在り 志の信仰に生きる
舩戸良隆 著
四六判 ・152頁・定価1540円・日本キリスト教団出版局

 本書は舩戸良隆先生が伝道者として半世紀を生きた、その足跡と証しが記された説教集です。本書には1965年に神学大学を卒業し、伝道師となった直後の先生の説教のみならず、その56年後、2021年3月に東神大卒業礼拝で語られた説教も含まれます。わかりやすい言葉で、聴衆に向かって、とりわけ巣立っていく神学生たちに向け、渾身の力を込めて舩戸先生は語りかけています。ちなみに、舩戸先生は昨年も東神大卒業礼拝に招かれました。コロナ禍のため、やむなく礼拝は中止になりましたが、先生が用意された説教も本書には収められています。

舩戸先生は、伝道者としてひたすら志の信仰に生きた人です。神学校在学中に、筑豊の炭鉱町で伝道活動をし、卒業後に伝道師となり、1960年代後半から東南アジアの教会と日本の教会の架け橋となって伝道に専心しました。

ベトナム、タイに派遣され、米国留学をはさみ、1980年に帰国。以後、JOCS(日本キリスト教海外医療協力会)、ACEF(アジアキリスト教教育基金)の代表となりました。85歳になる現在も、勝沼教会牧師として伝道の務めを果たしています。昨年10月には、2020年度キリスト教功労者として顕彰を受けられました。舩戸先生は桑田秀延先生、そして隅谷三喜男先生を人生の師と仰ぎ、一伝道者として少しもぶれることなく、ただひたすら伝道してきた気骨の牧師です。『我が国籍は天に在り』は先生の信仰告白です。

前置きが長くなりました。本書の内容紹介をします。第一部「我が歩みし道」は自身の歩みが証しとして語られる5つの説教です。第二部「十字架を高く掲げて」は先生がこれまで語り続けてきたキリストの福音の言葉が熱く説かれる5つの説教です。さらに第三部「喜びに生きる」は、次の世代への呼びかけの4つの説教です。

伝道者として走り抜いて来た舩戸先生は、とりわけ若い牧師や神学生たちに「がんばれ」と励ましを語るような語り口で説いています。たとえば、こう書いています。

「一生懸命、それこそ情熱を傾けて伝道しても成果が上がらない。高齢者が多く、この先どうなるのだろうという悩みがある。まさにエリヤが一人で野山をかき分けかき分け、心細さのあまり神に泣きつく思いで訴えた、その心と同じです。しかし、神は語られます。わたしがあなたと共にいる。いや、それだけでなく、七千人の同労者があなたと共にいる、と」(135頁)

ここを読んで評者は落涙を抑えきれませんでした。今も、教会の現場で苦闘している舩戸先生からのメッセージです。この説教を地方教会で苦闘する牧師たち、また神学生たち、信徒の皆さんに届けたいと思わずにはいられません。

この説教集は勝沼教会のために編まれました。勝沼教会の会堂建築のため資金が必要なのです。実は、「説教集を出版して収益で資金を得たらどうですか」と提言したのは評者でした。世間知らずの甘い考えだったでしょうか。にもかかわらず本書の出版は大いに歓迎され、実現しました。

この珠玉の説教集を心から推薦します。勝沼教会のためにすべてを捧げておられる舩戸先生を、また勝沼教会をどうか支援していただきたく、お願いをいたします。

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