五島列島の久賀島に潜伏キリシタン資料館オープン 殉教した信徒の子孫ら

 

世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を構成する「久賀島(ひさかじま)の集落」(長崎県五島市)に13日、潜伏キリシタン資料館がオープンした。子孫らの手による民間の資料館だ。館内には、かつて島で起きた過酷な弾圧の歴史や、信仰を守り抜いた先祖の姿がうかがえる100点におよぶ資料が並ぶ。

久賀島の潜伏キリシタン資料館(写真:上村敏雄さん提供)

久賀島は、五島列島の中で福江島、中通島に次いで3番目に大きい。明治政府が潜伏キリシタンを大規模に弾圧した「五島崩れ」(1868~69年)の発端となった島だ。明治元年の「牢屋(ろうや)の窄(さこ)」殉教事件では、200人もの信徒がわずか6坪の牢に収監され、拷問などで42人が殉教している。そのような弾圧を生き抜いた信徒たちが建てた五島列島最古の木造教会、旧・五輪教会堂(国指定重要文化財)などの史跡が島にはある。

旧五輪教会(写真:Indiana jo)

資料館を開設する中心となったのは、北九州市在住の上村敏雄さん(70)。両親が同島の出身で、自身もカトリック信徒だ。市役所職員として働いていたころ、たまたま目にした「長崎浦上の信徒流配(流罪)事件」にまつわる新聞記事がきっかけで、興味を持って調べていくうちに、先祖の助市が「牢屋の窄」殉教事件の拷問で亡くなったことを知った。

「島で起きた事実、また迫害を乗り越えて信仰を守り抜いた業績を後世に残したい」と考えるようになった上村さんは、同島出身のシスターで大阪市在住の鳥巣孝子さん(74)や島の信徒ら数人と協力して、関連資料の収集にあたった。全国各地にいる五島列島にゆかりのある人に声をかけたり、一部はブラジルやポルトガルから資料を収集したりして、10年以上かけて合計200点以上が集まった。

細石流(ざざれ)集落に関するコーナーには、鉄川与助が建築した細石流教会(1921年竣工。半世紀前に廃堂となり、現存しない)にあった聖像や、ありし日の教会堂の写真、教会内部の装飾品などが陳列してある。国内外に離散した信徒が持ち出していたものなどで、「地元で保存してほしい」と寄せられたという。

木製の十字架(写真:上村敏雄さん提供)

また、島の信者宅で保管されてきたマリア観音や木製の十字架、ミサの合図に使ったホラ貝、禁教令を掲示した高札、十字が描かれた茶器や古伊万里の皿なども展示されている。

禁教令を掲示した高札(写真:上村敏雄さん提供)

「久賀島の歴史はもちろん、日本のキリシタン史を分かりやすく伝えられる拠点として多くの人に利用してもらえれば」と上村さん。

資料館は築50年になる民家を改修したものだが、資料を陳列するためのケースまでは準備できず、その費用をインターネットのクラウドファンディングで調達した。当初の目標額をはるかに超える金額が集まり、資料館の開館が実現したという。

オープンを前にした12日には、信徒らおよそ30人が集まって祝別式が行われた。「この資料館を通して、先祖たちの信仰の足跡と遺産が伝えられ、多くの方々が、島の信仰の歴史と文化、信仰の自由と人間の尊厳に触れることができますように」と祈りがささげられた。

開館時間は午前9時から午後4時まで。入館料は300円(来年1月7日から)。

 






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