父母を敬えなかった女性の話 【発達障害クリスチャンのつぶやき】

6年くらい前、2015年くらいのことです。私の通う教会に、当時、20歳くらいの女性が通っていました。いわゆる求道者(きゅうどうしゃ。信者ではなく、教会に来ている人)でした。教会にもだいぶなじんできておられました。でも、彼女の話を聞いて、びっくりしたことがあります。彼女は、どうやら両親からひどい虐待を受けて育った人なのです。そしておそらく、その両親と、いっしょに住まなくてはならない(扶養されていた?)という事情の人なのです。

いっしょに住みながら、両親の「否定」をして生きないと、生きられない。とてもきつい状況にある人でした。でも教会では明るく、あるときAmazonで聖書を買ったら、その聖書が乱丁本で、くっついているページがあると、みんなの前で見せて、ウケをとっていたこともありました。みんな、彼女には優しく接していました。

しかし、その後、あることを聞いたのです。どうやら彼女は、聖書を頭から読んでいきました。そして、まもなく出エジプト記20章の「十戒」にたどりつき、「あなたの父母を敬え」という言葉が出てきて、ショックを受けていたのです。おそらく、「あの両親を敬わないと自分は救われないのか」と思ったことでしょう。

私は、彼女の思いがよくわかりました。そんな聖書の言葉は気にしなくていい、と伝えたいのですが、いわゆる「初心者」のほうが、聖書は絶対だと思ってしまうこともよく知っていますし、なにしろ目の前の彼女は、すごく傷ついているのです。私はもう、かける言葉がありませんでした。そのうち彼女は、私との連絡も絶ち、教会とも縁を切り、いなくなりました。

あれから6年くらい。いま、生きておられれば26歳くらいになるはずです。私の発達障害が明らかになったのは、それよりも後のことですし、私の両親が私を幼少のころから精神的に「虐待」してきたこと、私は愛されてこなかったこと、いまでも親から愛されていないこと、ずっと親から洗脳されてきたこと、などがわかってきたのは、それよりずっと後のことです。

そして、たったいまの私は、単身で両親といっしょに暮らしており、助けてもらいながら、両親とは波風を立てず(それが、私が滞在する条件らしいです。少しでも波風を立てようとすると、出ていけと言われます。とにかく親とは表面的に仲良くやって、追い出されないようにしているため、再洗脳されていっています)、ひたすら仲良くやっています。

ふと、久しぶりに彼女のことを思い出しました。こういうものに比較はできませんが、彼女のほうが露骨な虐待を親から受けている様子でした。両親と一緒に暮らし、助けてもらいながら両親を否定せねばならない立場になって、昨夕、彼女のことを思い出した次第です。

「あなたの父母を敬え」。とりようによっては恐ろしい言葉ですね。

腹ぺこ 発達障害の当事者。偶然に偶然が重なってプロテスタント教会で洗礼を受ける。東京大学大学院博士課程単位取得退学。クラシック音楽オタク。好きな言葉は「見ないで信じる者は幸いである」。

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