『沈黙』の舞台に建つ長崎市遠藤周作文学館、全館リニューアルオープン

 

カトリック作家、遠藤周作(1923〜96年)の生誕95周年を迎え、長崎市遠藤周作文学館が1日、全館リニューアルオープンした。

遠藤周作文学館(写真:ATSUSEPO)

それに先立ち、常設展示が先月28日から公開された。展示スペースもこれまでのおよそ3倍の広さに。少年時代から晩年までを6つの時代に分け、その生涯がパネルによって紹介される。また、代表作『沈黙』の直筆原稿、30代後半で闘病した時の日記のほか、かつて着ていたスーツや、イスラエル旅行で買った小物などの遺品も新しく展示された。

1日から始まった新しい企画展のテーマは「遠藤周作『愛』のメッセージ」。「愛」を体現する小説の登場人物を紹介するほか、遠藤が妻の順子さんに贈った手書きメッセージ入りの『沈黙』初版本、家族とやりとりした手紙などを展示している。企画展示の会期は2年間の予定。

また、同館に併設された旧喫茶スペースが全面改装され、「思索空間アンシャンテ」になった。「アンシャンテ」はフランス語で「はじめまして」の意味。教会をイメージして、スギ材を使った壁や、落ち着いた色のライトを使用している。海を望む窓に向かってカウンターと椅子、ソファやピアノなどが配置されている。雄大な角力灘(すもうなだ)が眼下に広がる風景を楽しみながら、思い巡らすひとときを過ごせる。

エントランス(写真:663高原)

同館は長崎市外海(そとめ)地区に2000年に開館した。「外海の出津(しつ)集落」は、先月30日、世界文化遺産に決まった「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本両県)を構成する12の資産のうちの一つ。

1966年に『沈黙』を書き下ろすため、何度も取材に来た遠藤は、外海地区に当時実在した黒崎村を、小説では「トモギ村」として登場させた。後にこの地を「神様が僕のためにとっておいてくれた場所」と言い、1987年にはこの地に「沈黙の碑」が建立された。96年に帰天した後、文学館建設構想が持ち上がった時も、同地がいちばんふさわしいとして、現在地に建設された経緯がある。手元に残された約3万点にも及ぶ遺品・生原稿・蔵書などが遺族から同館へ寄贈・寄託された。

禁教が解かれた後、ド・ロ神父によって建てられた出津教会(写真:PACHOPI)

世界文化遺産に登録され、同館を訪れる外国人も増えているため、リニューアルに合わせ、展示パネルには、英語や中国語、韓国語の説明が追加されている。

(関連記事:大浦天主堂など長崎・天草の「潜伏キリシタン遺産」、世界文化遺産へ

 






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