「絵本」は生きる力 言葉と想像力が心を優しくする 大嶋裕香著『絵本へのとびら』

子どもから大人まで年齢に関係なく心を豊かにしてくれる小さなメディア「絵本」。そんな絵本をこよなく愛する大嶋裕香(おおしま・ゆか)さんの最新刊『絵本へのとびら』(教文館)は、絵本と共に過ごしてきた時間を振り返りながら、生きる喜びを温もりのある言葉で綴(つづ)る珠玉のエッセイ集。

画像提供:教文館

大嶋さんは、1973年東京生まれ。上智大学文学部国文学科卒業。キリスト教雑誌、翻訳絵本の編集、校閲などを手がける。地域の幼稚園、小学校の絵本読み聞かせ会で活動。教会の親子クラス、子ども向けの会でも絵本の読み聞かせに携わる。現在、鳩ヶ谷福音自由教会牧師夫人。川口市主任児童委員。結婚、家庭、子育てセミナーなどの講演、執筆活動もしている。著書に『愛し合う二人のための結婚講座──わが家の小さな食卓から』(いのちのことば社、2015年)、『祈り合う家族になるために──家庭礼拝のススメ』(いのちのことば社、2017年)、『神に愛された女性たち──西洋名画と読む聖書』(教文館、2018年)がある。

同書は、手のひらサイズの小さな本。第1部「絵本へのとびら」は、大嶋さんが子ども時代に夢中になった本について、またご自身の子ども達と楽しんできた絵本の思い出について記されている。第2部「言葉との出会い」では、子育てを助けてくれたさまざまな「言葉」について書かれ、巻末には子どもの成長期に合わせたブックリストも掲載されている。

大嶋さんにとって本や絵本は、「想像の翼を広げたら、どんな遠い世界にも連れて行ってくれるかけがえのない友だち」(40頁)だという。同書は、そんな本好きな大嶋さんが選りすぐった絵本を、心温まるエピソードを交えて紹介する絵本の入門書であると同時に、絵本をとおして成長していく子どもの育児記録でもある。

絵本は、食べることや、眠ること、料理、身支度といった日常的なことから、病気の人への思いやりの心や、平和についてなど、驚くほど多くのことを私たちに教えてくれる。大嶋さんの子どもたちも、事あるごとに絵本の力を借りて新しい扉を開いていく。子どもは、大人があれこれ説明するよりも、「言葉」と「絵」によってできた絵本のほうが心に響くようだ。絵本は、人間が持つ想像力を引き出し、何をしたらよいのかを自然に思い巡(めぐ)らし、人の心を優しくする。

大嶋さんは、幼い頃から良い本にたくさん出会ってきたのだと思う。それは、両親や、学校、教会など本を身近に感じる環境が整っていたからではないだろうか。いつもそばにいて、ともに喜び、共に悲しみ、叱咤(しった)慰めるような本に出会えるかは、大人の責任であることを改めて感じた。子どもの成長に寄り添った本を、最も良いタイミングで与えてあげられたら、子どもはどんなに豊かに育つだろうか。

同書の中で、大嶋さんが夢に描いている教会の中の子ども文庫。実現することができたらどんなに素晴らしいことだろう。そして、その働きが、日本中の教会に広がっていって欲しい。

大嶋裕香『絵本へのとびら
2020年11月30日初版発行
教文館
1000円(税別)

この記事もおすすめ